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野田クリスタル&「もじぴったん」生みの親に聞く“ゲーム作りと生成AI” クリエイターとしてどう向き合う?「野田ゲー」コンビにインタビュー(1/2 ページ)

» 2024年12月30日 12時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 「M-1グランプリ2020」で優勝したお笑いコンビ「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさんが制作したことで話題になったNintendo Switch向けゲーム「野田ゲー」シリーズ。ゲーム好きが高じて野田さん自ら独学でプログラミングを学び、ピン芸人向けの「R-1グランプリ」のネタに使ったエピソードもあり、リリースに当たってのクラウドファンディングでは、シリーズ3作合計で6600万円近くを集めたほどの人気だ。

 そんな野田ゲーシリーズ最新作、「スーパー野田ゲーMAKER」が12月19日に発売された。目玉は、ゲームのジャンルやクリア条件、主人公の能力などを選択していくことで、自動でオリジナルのゲームが完成する「野田AI」。作ったゲームをプレイしたり、他プレイヤーとシェアしたりするのが同作の楽しみ方となる。

photo 最新作「スーパー野田ゲーMAKER」

 実は野田AIも、昨今話題の生成AIに着想を得たという。プラットフォームの制約により、ソフトに内蔵しているデータからしかゲームを作れなかったことから、野田AI自体には生成AIを使っておらず、ルールベースのAIとして開発したものの、ゲームの画像素材の一部には画像生成AIも使っている。

 コロプラなど、大手ゲーム企業も生成AI活用に乗り出す昨今。野田ゲー制作陣はいちクリエイターとして、生成AIとどう向き合っているのか。野田クリスタルさん本人に加え、野田ゲーシリーズの制作に携わってきたキーマンで、パズルゲーム「ことばのパズル もじぴったん」の生みの親である面白法人カヤックの後藤裕之さんに話を聞いた。

photo 後藤裕之さん(左)、野田クリスタルさん(右)

生成AI、どう思う? 2人の受け止め

──今回の目玉である野田AIは、いわゆる生成AIの浸透などから着想を得たものでしょうか

野田クリスタルさん(以下、野田クリスタル):そうですね。質問に答えると、ユーザーが想定している人物やキャラクターをしぼり込める「アキネイター」ってあるじゃないですか。あれも一種のAIだと思うんですが、同じように質問に答えていく感じでゲームを作れたら楽だろうなと思ったのが始まりでした。

 プログラミングで細かい文字を打ち込んでいるとだんだん辛くなってくるんですが、そこでサクッとゲームを作ってくれるAIがあればいいなと。そこから吉本の劇場とかで、ゲームのジャンルや要素を細分化する作業に入りました。「シューティングってこういう要素に分解できるよね、アクションってこういう要素で分解できるよね」みたいな。そのパーツをさらに後藤さんに広げてもらいました。

野田AIと、AIの指示に沿ってゲームを作る最中の様子

──それが、要素を選んだらゲームを作ってくれるAIにつながったと。とはいえ、生成AIは人それぞれに受け止めが異なる技術で、反感を持つ人も少なからず見られます。お二人はゲームクリエイターとしてどう捉えていますか

後藤裕之さん(以下、後藤):否定的な人もいるとは思いますが、ゲームに限らずトライアンドエラーが最速でできるのはすごいと思います。

 人間が何か思い付いても、実際に作るのはすごく時間がかかるじゃないですか。ゲームは特に、実際に作ってみないとどう面白いのか分からない。AIがない時代、そのトライアンドエラーをやって遊んでを繰り返すと「1カ月くらい作ってつまらなかったやり直し」みたいなことが起こり得ました。

 そのスパンが、AIだとあっという間になる。ゲームは完成させることがすごく大変なので、短いスパンで気楽にできて、自分の発想をすぐ実現してくれるAIは、うまく道具として使えば、人間の発想力を奪わず広げてくれる可能性があると感じていますね。

野田クリスタル:僕もほぼ同じ意見です。特に個人でゲームを開発している人からすると、大量の絵が欲しいのにそれを描ける人がいない、アイデアはあるのに素材はないという事態はたくさん起こり得ます。それを解決でき得る手段、個人が大手に勝つ方法として、生成AIが活躍するのかなと。

──コロプラなど、生成AIの活用に意欲を見せる大企業も出ています。この動向をどう思いますか

後藤:例えばまともに作ってたら10年かかるゲームを4〜5年で作れるなど、ショートカットに役立てば、ゲームを遊ぶ側としてありがたいですよね。

 また、大手がこれまで培ってきた技術と、AIによるショートカットが組み合わさると、これまで作れなかったゲームが世に出てくるかもしれません。そうすると、今度はそれをヒントに、今までに世になかったゲームが出てくるかもしれない。大手に限らず個人にも恩恵が波及し、これまで作れなかったものが作れるようになれば、それはそれでポジティブかなと思います。

野田クリスタル:大手がAIを使ってくれた方が、AI技術の進歩にもつながり、さらに法人開発にもつながり──と、いい話しかないと思いますね。

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