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春爛漫!一度は訪ねたい吉野山・高遠・弘前の日本三大桜名所

見渡す限り一面ピンクの花に埋め尽くされる、日本三大桜名所の奈良・吉野山、長野・高遠、青森・弘前。それぞれの土地を愛する人々が長い年月をかけて大切に育ててきた桜が、圧巻の景色を作り出す。

【吉野山】名実ともに日本一の吉野千本桜の絶景

約3万本の桜が山を埋め尽くす「吉野千本桜」の絶景。Photo: Getty Images

奈良県のほぼ中央に位置する吉野山は、古くからの修験道の霊場として、金峯山寺を中心に国指定文化財の神社仏閣が点在し、全域が世界遺産にも登録されている。日本三大桜名所の筆頭ともいえる吉野山の桜は、約1300年前に修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が、山桜に金剛蔵王権現を刻んだのが始まりで、信仰のしるしとして人々が増やし続けた桜の数はなんと約3万本にもなる。

吉野の桜は、標高の低いエリアから順に、下千本、中千本、上千本、奥千本と名付けられ、下から徐々に開花していく。下千本から中千本にかけての見どころは、金峯山寺や𠮷水神社。上千本エリアでは、県境の金剛山までを見渡す一大パノラマの花矢倉展望台。眼下には“吉野千本桜”の見事な姿が広がっている。西行法師が世俗を逃れて住んだという奥千本の西行庵では、10年前に周囲に植えられた約1,000本の若い桜が成長し、生き生きとした花を付ける。

固有種のシロヤマザクラが中心。赤い葉をつけた後に花を咲かせる。Photo: Getty Images

吉野山観光協会
https://yoshinoyama-kankou.com/

【高遠城跡公園】古城を雲のように包む「天下第一の桜」

桜と古城のコントラスト。市内の旧家から移築された問屋門をタカトオコヒガンザクラが包み込む。Photo: Getty Images

長野県南部の中央アルプスと南アルプスに挟まれた谷間の町・伊那市。江戸時代にこの一帯を治めていた高遠藩の城跡も三大桜名所のひとつ。伊那市の中心から南アルプスに向かう街道の途中、川に挟まれた小高い丘の上にある。戦国時代に武田家と織田家の興亡を賭けた戦いが行われた場所としても知られ、「日本100名城」にも選ばれている。廃藩置県で建物は撤去され、跡地は公園として整備されたが、その時に藩士たちが城下から移植した桜がルーツになっている。

今年150年を迎える古木が約20本、樹齢50年以上の木が500本ほどあり、約1,500本の桜が春になると一斉に花開く。少し赤みを帯びた、小ぶりで可憐な花を付けるのは、高遠生まれの固有種。「天下第一の桜」と称されるタカトオコヒガンザクラと、国の登録有形文化財の高遠閣や城下から移築された問屋門、太鼓櫓などの歴史遺産のコントラストが、高遠でしか出合えない風情あふれる光景を作り出す。

満開の桜をこの橋から眺めると雲の様に見えることから名付けられた「桜雲橋」。Photo: Takashi Komiyama/Aflo

高遠城跡公園さくらまつり
(一般社団法人 伊那市観光協会)
https://takato-inacity.jp/2025/

【弘前公園】東北一の桜名所は見どころ満載

弘前公園の桜は明治維新で藩が廃され、荒れかけた城内に元藩士たちが植えたもの。弘前を愛する心が東北一の花見の名所を創った。Photo: Getty Images

桜前線が北上して、本州北限の青森に到着するのは毎年4月中旬。弘前公園では、そこから5月上旬にかけて、ソメイヨシノに始まり、枝垂桜、八重桜など、52種類約2,600本の桜が花開く。一カ所にこれほどの種類の桜が植わっているのは、日本中探しても弘前公園だけだ。白い花びらに淡紅色のフリルが入る「弘前雪明かり」、花びらが淡黄色という異色の桜「鬱金(ウコン)」、園内に3本だけの大輪の八重咲「松月」など、とくに珍しい7種「弘前七桜」は必見だ。

弘前公園に来たら見ずには帰れない絶景のラインアップが「弘前桜七景」。1882年に元藩士が私財を投げうって植えた1千本のうち、いまも唯一残る「最長寿のソメイヨシノ」に始まり、桜の枝を見上げるとハートの形に夜空がのぞく「桜のハート」や夜はライトアップされて水面に幻想的な花が映る「春陽橋」など、弘前の桜の魅力をフルに体験できるスペシャルな風景ばかりだ。

満開を数日過ぎたころから外濠の水面が花びらで覆い尽くされる「花筏」が見られる。Photo: Getty Images