大船渡山火事派遣消防隊員 「経験したことない現場」 同時多発的に火災 風最大の障害 水戸市消防局会見
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発生から1週間が経過した岩手県大船渡市の山林火災では、県の「緊急消防援助隊」として派遣された多くの消防隊員が現地で活動を続けている。第1陣から地元に戻った水戸市消防局の隊員らが4日、市役所で記者会見し、「これまで経験したことがない現場だった」と消火活動の難しさを語った。(伊能新之介)
「同時多発的に火災が起きていて、『消した』と思っても、違う場所から火が出るような状況だった」
大隊長として部隊を指揮した水戸市消防局消防救助課の久保田充課長補佐(57)は、そう振り返った。活動したのは大船渡市の東側にある
県消防安全課によると、県の緊急消防援助隊の第1陣として派遣されたのは23消防本部の計178人で、44台の消防車も向かった。2月27日午後11時頃に現地に到着し、そのまま消火活動を始めた。最初に担当したのは山間部にあるダム付近の現場だった。川からホースを延ばして水を引っ張り、4、5時間かけて放水を続けた時には朝を迎えていた。
現地では他県から駆けつけた隊と8時間交代で活動を続けた。県の緊急消防援助隊は2021年の静岡県熱海市の土石流災害でも派遣された。その後も毎年のように他県との合同訓練を実施してきた。久保田課長補佐は「茨城だけではなく、応援で来ている全隊の気持ちが同じ方向を向いていると感じた」と力を込める。
今回の消火活動で障害となったのは山間部での「風」だった。小さな火種でも被害が拡大したり、気づかないうちに背後に燃え広がったりすることがあったという。周囲の状況を確認して隊員の安全を守る「安全管理隊」にも人員を割いてけが人を出させないようにしたが、無線が途切れる場面もあり、隊員同士が口頭で指示を伝えたこともあった。
大船渡市では、住民約4000人が避難生活を強いられている。そんな中で、地元の人は消防隊の拠点となる体育館を居心地の良いように整え、フルーツも差し入れてくれた。水戸市消防局の消防救助課の畠山貴之主任(34)は「大変な状況にもかかわらず、温かいおもてなしをいただいた」と感謝の気持ちを述べた。
県内でも、先月13日に常総市などで雑木林火災が起きるなど火災が頻発していることについて、久保田課長補佐は「乾燥した状況では、たき火をしたりタバコを投げ捨てたりすることは控えてほしい」と注意を促している。
大船渡市の山林火災ではこれまでに約2600ヘクタールが焼失した。県は5日から第3陣の応援を派遣する方針。