国内外に驚きを与えた“自分を見るアイウェア”「JINS MEME(ジンズミーム)」。メガネ中央のセンサーが目の動きを検知し、疲れや眠気といった情報をスマートフォンに送るメガネ兼用のデバイスで、来年春に発売予定だ。発表から約2カ月、ジェイアイエヌ(JIN)の田中仁社長は「国内外の100社以上から協業などの話が来ている」と明かした。開発に至る経緯から今後の戦略まで、田中社長が“秘話”を語る。

(聞き手は井上理)

「JINS MEME」のお披露目発表会は300人以上の関係者が集まり、世界中で報道されるなど注目度が高かったですね。

田中:我が社の企業規模からすると、けっこう振りきった発表会だったんですよ。何しろ製品が「世界初」だったので、今自分たちがやるべきこと、やれることを全部投入しようということで、費用が積み上がった。従来の3~5倍の経費がかかりました。

 結果は大成功で、メディアは我々が想定していた数より何十社も多く来てくれた。国内だけではなく、米ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ始め、欧米の主要メディア、それからアジアも含め、かなり世界的に広まったんですよ。「米国発売が発表されなかったことは残念だ」みたいに報じてくれて。

 協業先と成り得るであろう企業さんにもお声がけしていたのですが、こちらも、実際には想定を数十社超える数にいらしてもらえました。

「誰もが知るシリコンバレー大手」も参加

協業先と成り得る企業は、情報開示して招待したのでしょうか?

田中:メディアと同じで、「ウェアラブルの先」というキャッチコピーで、様々な企業さんをご招待したんです。例えば、誰もが知るビッグなシリコンバレー大手から、国内の電機メーカー大手、携帯電話会社、自動車メーカーにも来ていただきました。

その後に来た協業の打診や具体的なアポイントの要請は?

田中:これ、言っていいのかな。100社以上ですかね。国内外から話をしたいということで来ています。民間企業だけではなく、欧米の医療関係機関などからもアプローチがありました。

田中:「眼電位」をどう解析して、どう伝えていくのかは、一企業、一先生ではなく、多様な企業や先生方の知見を集めたほうがよりいいモノができると思うんですね。ですから今、すごく広がりを感じている最中です。

 JINS MIMEの肝となるのが眼電位の検出技術。鼻パッドに仕込んだ3つのセンサーが、眼球が動くと生じる微小な電位差、眼電位を捉え、8方向の視線移動とまばたきを検知する。そのデータを、ブルートゥース無線を通じてスマートフォン(スマホ)に転送。疲れや眠気など、アプリが眼電位に応じた様々な兆候を可視化する。

 今回、JINはメガネの形状をほぼ変えずに眼電位を測定できる「3点方式」を、「脳トレ」で有名な東北大学の川島隆太教授ら複数の研究者と共同開発した。JINによると、眼電位検出はこれまで、医療や軍事用途で使われてきたが、民生品への応用は初めてという。

開発に至るきっかけは。

田中:基本的にうちは安い製品を売っている。安い製品って、「安かろう、悪かろう」と、金額とクオリティをイコールで考えてしまう方が多いんですね。だから、安くても実際に効果効能があるというエビデンス(根拠)をもとにしたモノづくりをしていこうと思ったんですよ。

 それで、産学で組んで新しい製品を作ろうという時に、たまたま知り合いが川島先生を知っているということで、じゃあ紹介してくださいとなり、4年前にお会いしたのが始まりでした。川島先生とブレインストーミングのようなミーティングを重ね、そこから眼電位検出のアイデアが出てきたのです。

社員にも“血判状”、守秘義務を徹底

ブレストから足かけ4年。ようやく製品化のメドがつき、発表に至りました。

田中:ブレストから約3年間は、社内で知っていたのは私を含めて3人だけです。昨年初めくらいから、社内のR&D部門に徐々に情報を渡していったのですが、かなり情報管理を徹底しました。

 例えば、「この情報を言ったら大変な目に遭うよ」という守秘義務契約を社員とも交わしました。血判状じゃないですけれど、ミーティングの都度、参加する社員全員にサインしてもらい、済んだら会議を始めましょうと。「本当にこれ毎回書くんですか」と言われました(笑)。

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