Facebookのアイコンで旗幟鮮明にすることの是非
Facebookのアイコンをトリコロールにすることについて、様々な意見が出ています。こういう意見も出るだろうなと思ってはいたし、違和感はないです。かといって、自分のアイコンを変更したことを後悔してもいないので、簡単に気持ちを書き留めておきます。*1
レインボーの時は設定しなかったのに、なぜ今回設定したのか、改めて振り返ると、安直な話ですがUXが大きいように思います。レインボーの時はURLを調べて入力する手間がありましたが、今回は知り合いがトリコロールを設定してる、横に試すボタンがあるので押す、設定する、という導線ができていたので、深く考えずにアイコンを設定できてしまいました。とはいえクリックする前に何も考えなかった訳でもないのです。
今回のパリでのテロで最初に思い出したのは3.11と9.11でした。3.11の翌週プラハへの出張を予定していて、けれども東京では米の入手にも困る状況で、原発も大変なことになっていたし、会社も在宅勤務を推奨するような状況で、家族を連れて疎開するかどうか悩む状況でキャンセルしました。
その翌月に出張した先がパリでした。世界中の同僚と再会して、アイルランドの同僚からは「俺はチェルノブイリの時にキエフにいたけど、こうして元気だ。東京も大丈夫だよ」と励まされました。僕はもともと出張中の宿でテレビをつけることはあまりなかったのですが、フランス滞在中はずっとFrance 24をつけ続けました。France 24は1時間おきに福島の状況を報じていて、当時まだ日本の地上波テレビが報じず、Ustreamなんかで確認する必要のあった反原発デモなんかも、ちゃんと丁寧に報じていました。
平均的な視聴者の関心を考えた場合に、週末の地上波テレビのテロ事件に対する取り上げ方はまあこんなものかとも思うのですが、NHKのBSまで含めて日常通りというのは、さすがに如何なものかとも感じたんですよね。で、少なくともFrance 24は東日本大震災の時あれだけ日本のことを報じていたのに、と思った訳ですよ、土曜日の時点では。
シリアの空爆で亡くなった方々、日本がシリアに限らず難民を受け入れていないこと、パリだけでなくベイルートでも大きな自爆テロがあったこと、それらに対する関心もまた、パリでのテロ事件に対して以上に関心が低いことなども重々承知の上で、やはりパリでのテロ事件は重い出来事で、それに対して強い関心を示すことを表明する方法として、アイコンをトリコロールにすることも一つのキャンペーンとして悪くないと考えました。友達のアイコンの幾つかがトリコロールになっているのを見て、パリでテロ事件が起こったんだったな、今どうなってるんだろうって気にかける人だっているかも知れないし。
国旗にはあまり良くない印象もあって、9.11の翌々月にサンディエゴに出張したのですが、軍港の街だけあってそこらじゅうに星条旗が掲げられている訳です。当時もうアフガニスタンへの空爆が行われていた頃で、きっと東京大空襲の日も、サンディエゴの街はこうやって閑静で、星条旗が掲げられていたのだろうか?日本国民も制空権を失って空襲を受けるまでは中国にある前線での悲劇について無頓着だったろうし、なんてことを考えました。スポーツバーでは大リーグの試合をやってて、試合の途中にゴッド・ブレス・アメリカを斉唱するのですが、米国の正義に違和感を持ってる自分でさえ、なんかこう崇高な雰囲気に押し流されそうになるんですよね。サンフランシスコに行くとそこら中にIn God We Trust、United We Standって宣伝が、AppleのThink Differentばりにカッコよく掲げられ、ああ民主主義国の戦争は民心掌握から始まるんだと考えさせられたりもしました。
そうした戦争プロパガンダとは別に思い出したキャンペーンは、1996年2月に世界中のホームページが黒く染められたことです。通信品位法の成立に反対して、ヤフーやマイクロソフト、ネットスケープ始め米国のネット企業が軒並みホームページで喪に服したのでした。自分のホームページは元から黒地に白だったのですが、ブルーリボン・キャンペーンのバナーを貼ったことを覚えています。当時のWeb自体が小さかったとはいえ、あれだけ大がかりなネット上のキャンペーンを他に知らないし、あちらこちらのページが真っ黒になっているのを見て、初めて通信品位法に興味を持つ人もいたのではないでしょうか?
こんなことをツラツラと思い出して、Facebookでトリコロールのアイコンを見てパリでのテロ事件を想起する人がいるだけで意味があるし、中にはテロ事件について関心を持つことを契機に、その引き金となった西側諸国によるシリアでの介入や、ISが起こしている他のテロにも関心を広げる方もいるかも知れない訳で。意味があるか、それが正しいはさておき、流行に乗ってみてもいいかなと思ったのでした。