飼い犬タロになっているつもりで詠んだ、2024年下半期の犬短歌です。一部、俳句と私名義の短歌も混じってます。気に入っているのには*をつけてます。
今年は飼い主がやたら忙しく、前よりタロと遊ぶ時間が減ったためか、ストレスで食い気に走り、私も罪悪感からいろんなおやつをいつも以上に与えてしまい、結果食べ過ぎでお腹を壊すことが何度かありました‥‥。すみません。
来年タロは12歳。元気でシニア犬ライフを楽しんでもらいたいです。
◆七月
天の川洪水となり満天の星吉凶を超えて輝け *
「貼りまわれ!こいぬ」に頼もう街中のシールの上に犬ステッカー
なぜ君はおいしいねぇと言うのだろう食べているのはこの俺なのに
スズムシがやらせてくれと一晩中きれいな音で訴えている
もの忘れ激しいひとに本日のおやつはまだ?と嘘のおねだり
オシッコはツイツイツイート犬たちのタイムラインで炎上はなし
人類よ地上の暮らし諦めて穴に住むのだ涼しい穴に *
◆八月
何もかも忘れ楽しむスペシャルな日が毎日の犬の生活
水色のクールリングをした人とふたりで夏に繋がれている
体臭が消えちゃったらばどうやって自分をアピールしたらよいのか
盆の膳片付けられて一個だけ俺のメロンが残されている *
直前の豪雨予報ができるので予報士犬でデビューしたいな
台風は週末に来る今はまだのんびり泳いでおいでメダカよ
◆九月
会長の犬として言う自治会の住宅地図に犬地図入れろ
見えている景色は違うけど秋の気配にそっと君の指噛む
一瞬の中に彼女と秋の陽をうけて過ごした永遠がある
退屈な日のエンディングに似合わない映画のような夕焼けの赤 *
縁の下あまり掘るなと言う人と掘りたい俺の正義ぶつかる
土掘りはアイデンティティ犬自認してる者なら知っているはず
イオンには犬のおやつの棚があるお金払えば棚ごと買える
◆十月
生きてたら百歳だわと母ポツリ 父誕生日の十月三日/サキコ
人間じゃもう五十ねと言いながら俺の目ヤニを拭く六十五 *
あのひとの消し炭色のカーディガン箪笥の匂い雨に溶けゆく
岩合さんみたいな人が歩いてた 犬でよければモデルやります
輸送機の低く飛ぶ空 鈍色に光る雨足 俺は中年
町内に防犯カメラつけるより防犯犬団組織しようぜ
あのひとがホラーに出るなら『呪われたゲゲゲの老婆 犬の怨念』
神々が降りてきそうな星空の下でさみしい糞をするなり *
◆十一月
俺の腹やや恢復の兆しあり 優しく風に揺れる秋桜
ポンポンはもう治ったねと腹さする君はなにゆえ赤ちゃん言葉
いつまでも鞄の中で鳴っているスマホのような秋の虫の音 *
「犬は」でも「柴犬は」でも駄目なんだ「タロは」とちゃんと書いてください
腹減って腹減りすぎて君の鼻食べそうだから早く飯くれ
◆十二月
枯れ草は冬の空き地の抜け毛なり
舐めた手も頬も冷たい冬の朝
いつのまに十一年も生きたかな俺の心は三歳のまま
ふたりきり密談をしたカーシート夜明けは遠い夜明けは近い *
⚫︎2024年上半期の犬短歌。ページの最後にそれ以前の年へのリンクもあります。