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ノートは美しく


東大合格生のノートはかならず美しいという本が売れている。ジュンク堂では受験参考書のコーナーに置かれていたが、これはビジネス書籍のような気もする。


私の経験上、優秀な人ほどきちんしたメモの取り方をしている。仕事の出来る人は、何をメモをとるべきかを正しく判断する能力や、リアルタイムにきちんとカテゴライズして、体系的にまとめながらメモを取る能力に優れている。


そもそも仕事の出来ない奴は、メモすらとらない。メモを取る習慣すらない。何をメモしていいかわからない。メモを取り慣れていないから、論理階層をぐちゃぐちゃにしたメモを取って、書いたり消したりを繰り返す。


書いたり消したりするだけならまだしも、無秩序にメモを取って、あとで読み返しても何が書いてあるかわからないメモをとる。打ち合わせのあと、読み返すことすらしない。メモの取り方がひどすぎて読み返すことすら出来ない。それは一体、何のためのメモだ?ひどい奴になると、打ち合わせに筆記用具すら持ってきやがらない。ビジネスマナー以前の問題で、ほんと、論外だと思うのだけど、そういう奴はこのIT業界にはいっぱいいるんだ。ここは小学校かよ!と言いたくなるところだが、我慢我慢である。


私の経験上、打ち合わせにモバイル端末やノーパソを持ってきてメモを取る奴にも要注意だ。もともとメモを取り慣れてない奴がノーパソなんかでメモをとると、編集がしやすいので、「一発で仕上げなければ」という意識が薄れ、「何でもいいから書いておけばいいや」とか「覚えきれない分だけ書いておこう」とか、ひどい奴になると何をどう書いていいかもわかっていない。


そんな奴に打ち合わせ内容をテキストで書き出してもらっても、てんで要点がわかっていない。「それだけしかわからないなら、なんでもっとメモしておかないの?」と思うのだが、何が重要かもわかってなかったり、聞いているときは本人は絶対に忘れないつもりだったりするのだからたちが悪い。彼らのその自信は一体どこから来るものなのか本当に知りたい。


東大合格生のノートはかならず美しい」というのは、現役東大生ほど否定したがるのかも知れないが、私はかなり真実だと思う。(ここで言う「美しい」というのは字が綺麗とか丁寧だとかそういう話ではない。「きちんとまとまっている」ぐらいの意味だ。) それは、誰かから教わったわけでもなく、勉強していく過程で、ノートを効率的にとる方法を模索し、最適化してきた結果、自然とそうなっているのだと思う。


ノートにうまくまとめることが出来る人は、頭のなかも理路整然と整理されている。そういうのは、本来は小学校で授業のノートを取る過程で習得すべきことだ。あるいは、学習のもっとも早い段階で真っ先に学ばなければならないことだ。教師が黒板に書いた内容をそのままノートに書き写し、そのノートに書かれた内容を覚えるのはただの記憶ゲームだろう。勉強というのは、本来的にそういうものではない


勉強の仕方自体は普通は自分で発見するものだ。誰かに教えてもらうものなんかじゃない。英単語をどうやれば効率的に暗記できるのか?何かに関連づけるのか?語呂合わせにするのか?どうやって語呂合わせを作るか?語呂合わせを考えるにはどうすればいいのか?それとも、文自体を何度も朗読し、暗唱するまでやるのか?24時間リスニングのCDを聴くのか?4秒ごとに1単語見て、その単語の意味を思い出すことを延々と繰り返すのか?いろんな方法を試しながら新しいことを学習するための汎用的なメソッドを編み出していく。そこには何か新しいことを習得することの面白さと日々の発見があり、それこそが勉強そのものなのだ。


この基本ルールを誰からも教えられないまま、そして自分でも気づかないまま大人になった人は不幸だと思う。「受験勉強は乗り切れたのに実社会に出て全く役に立たない」と言うのなら、それは間違った勉強法のせいじゃないかな。


かく言う私は、「ノートを美しく」を心がけるようになったのは大学に入ってから。
気づくのが遅すぎた感がしないでもないが、社会人になるまでには間に合ったし、あのころに培ったノウハウ(?)は、いまもかなり役に立っている。


メモを取るのが苦手と思う人には、是非、東大合格生のノートはかならず美しいを読んで、何をどうメモすべきか考えてもらいたい。そして、メモを取る訓練をしてもらいたい。例えば、1分間のニュースを聞き、その内容を過不足なく誰かに伝達できるようにメモをとるような訓練を繰り返すだとか。


こういった努力は、決してすぐに実を結ぶわけではないが、本当に大切な能力だ。本音を言えば、私は子供のころに誰かに教えてもらいたかった…。