その人が書いた文字を見ればその人の性格が分かる。という言葉を聞いた事があります。まさしくその通りで、友人と5人で集まった時にそれぞれ字を書いてみたのですが、柔らかい子は柔らか角ばっていない字を。気が強く芯が強い子が綺麗な中にも少しきつそうな雰囲気を出す字を書くのです。文字とは本当に不思議な影響力と不思議な説得力を持っているものだと思うのです。
街を歩いている時にもたくさんのポスターが貼られていると見るのが楽しくなってきます。そのお店の雰囲気や商品が本当に文字の雰囲気で伝わってくるのです。 その文字に分かりやすく皆に伝わるように魔法をかけてくれるのが書体とフォントだと考えます。
私達が今日はどんなお化粧をしよう。そんなお洋服を着ようと悩むように書体とフォントにどれを飾り付けてあげようか考える事はとても楽しい事です。私が、よく優しい印象のポスターを作りたいという時には、「やさしさゴシック」を使います。ヒラギノ角ゴシックを使う事も多いです。
確かにヒラギノ角ゴシックも柔らかく穏やかなイメージなのですが、やさしさゴシックは食べ物で例えるならマシュマロのような柔らかさ穏やかさプラスオブラートが包まれているようなそんな印象です。ついついお気に入りばかり使ってしまいがちなのですが、フォントと書体にもTPOがあると思うのでその場で使い分けています。
私は、学生の頃デザインを勉強していたのですが、先生がよく仰って下さっていた言葉がありました。「綺麗な書体、可愛いフォントをいくら使っても相手にその1枚のポスターから伝えなければいけないものを伝えられない作り方をしていれば、見てもらう人。商品。そして文字達に失礼になってしまう。フォントも書体もデザインの1部なのだ。」と。
それまでは、私は書体とフォントは言えば脇役。商品が主体で説明文さえ読めれば良いのではないかという見解でおりました。が、それから、書体やフォントを注意深く見るようになり今ではその時に先生が仰った意味が分かるようになりました。
その事を知れて世界観も広がりました。人と書体とフォントは切っても切れない間柄だと思います。何故ならそこに私達が相手に伝えたい事。伝わってきてほしい事という紙の上でのコミュニケーションが詰まっているからです。これからも沢山のフォントや書体を通して何かを伝えられる、気持ちを届けられる使い方をしていきたいと改めて感じています。