先日、参議院予算委員会のメンバーで、地方に出張し、日々経営努力を続けている企業の実態を視察してきた。大企業のみならず、中小企業も元気に頑張っている実情を見て、日本の将来は暗くないという思いを強くした。日本人は自信を失う必要はない。世界最先端の技術が山ほどある。
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ただ問題なのは、それを活かすも殺すも、政治の舵取り次第だということである。
視察先は福島県と栃木県で、厳しい国際競争の中で生き残っている中小企業を訪ね、経営陣と意見交換をした。
いずれの会社も、その製品が世界の中でトップクラスのシェアを誇っており、その最先端技術は世界中が認めるところである。意見交換の中で、いずれの経営者も共通して指摘したことがある。
第一は、日本の法人税が高すぎるということである。過去15年間、世界各国の法人税は下がり続けている。115カ国の平均値で見ると、1993年に38.0%であった税率が、2009年には25.5%にまで下がっている。現在、日本が40.7%なのに対して、お隣の韓国は24.2%、中国は25.0%である。
法人税のみを考慮すれば、企業にとっては、日本よりも韓国や中国のほうが遙かに魅力的である。
世界の税制改正の方向は、法人税を下げ、消費税を上げるというものである。
いくつかの国について、これを見ればOECD平均(26.3/17.6)、EU平均(23.2/19.8)であることが分かる。
(最初の数字が法人税率、次の数字が消費税率)、
ドイツ(29.4/19.0)、スウェーデン(26.3/25.0)、韓国(24.2/10.0)、
ブラジル(34.0/19.0)、ロシア(20.0/18.0)、インド(34.0/12.5)、
中国(25.0/17.0)、
日本も、世界の潮流に合わせて行くべきだ。さもなければ世界の企業を日本に誘致することもできないし、日本の企業は海外へと移転していくであろう。もちろん企業が立地を決めるときに考慮するのは、法人税のみではない。
治安や生活習慣など様々な要因がある。しかし、利益を最大化することが企業の目的だとすれば、法人税が経営判断に占める重要性は言うまでもない。法人税減税、そして規制緩和を徹底させることが、これからの日本がとるべき道である。しかし、鳩山内閣には、このような問題意識が欠如しており、したがって政策を間違えて日本を沈没させる危険性がある。
政権交代が起こったのは、小泉改革が中途半端で、構造改革を徹底しなかったからである。政府は、企業が十分に活動できるための枠組み作りをすべきであり、企業活動の足を引っ張るようながんじがらめの規制は緩和すべきである。そのような規制が、日本の競争力を損ない、中国の後塵を拝するような事態を生んだのである。
日銀は金融緩和によりデフレ、円高対策を
経営者たちが述べた第二の懸念材料は、円高である。技術者たちは、1円のコストを削減するために、血のにじむような努力を重ねている。そのような努力の中から世界最新の技術が生まれたのである。
しかし、為替相場が一気に4~5円も変化すれば、原価を1円下げたところで、まさに焼け石に水ということになってしまう。為替相場の安定のために何ができるのか、G8の場でも先進国の蔵相や中央銀行総裁が議論をしている。変動相場制度を前提にしたうえでも、為替の安定化策をさらに強化すべきであろう。
円高が有利に働くか不利になるかは、業種や企業によっても異なるが、企業の努力とはかけ離れたところで自らの国際競争力が決められることは正常ではない。そのような認識を世界の指導者が持つべきである。
第三は、デフレである。日本ほどデフレからの脱却に時間がかかっている国はない。日銀は、さらに一層の金融緩和を行って、この泥沼のデフレを収束させるべきである。この金融緩和は、円高の進行を阻止するのにも役に立つ。政府と日銀は、政策を調和させて、日本企業の努力を支援すべきであろう。