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東日本大震災をきっかけに、帰宅困難者対策が注目されるようになった。帰宅困難者の大量発生は道路や鉄道といった交通網をまひさせる上、余震などにより帰宅困難者自身が危険にさらされる恐れもある。官民あげての対策が動き始めた。
「かつては大きな災害があったら『すぐに社員を帰宅させろ』と言われた。だが、大震災で大量の帰宅困難者の発生を経験して、『すぐに帰宅させるな』と方向性は180度変わった」。東京・大手町に本社のある金融関係者は語る。「徒歩で帰宅し、2次災害に巻き込まれる恐れもあるし、長距離通勤者が帰りきれずに路頭に迷ってしまった」と振り返る。
昨年3月11日、東京都心やその周辺では、帰宅を急ぐ大勢の人が歩道からあふれ、駅に殺到した。また、家族を案じた迎えの車などで大渋滞が随所で発生し、救急活動に支障をきたしたのはいまだに記憶に新しい。
内閣府が東京都、神奈川、埼玉、千葉各県と茨城県南部の居住者を対象にした調査から、震災当日に帰宅できなかった帰宅困難者は約515万人と推計されている。内訳は、東京都約352万人▽神奈川県約67万人▽千葉県約52万人▽埼玉県約33万人▽茨城県南部約10万人。
また、地震発生時に会社や学校にいた人たちのうち、47%が午後5時台までに会社・学校を後にしていたことが判明した。午後4~5時台に帰宅した理由を聞いたところ、約35%の人が「会社(学校)の管理者から帰宅するように指示があったため」と回答した。一斉帰宅を防ぐためには、会社や学校からの適切な指示が必要ということが浮き彫りになった形だ。
首都圏に事業所を置く739の企業にも調査を行った。そのうち約8割の企業が帰宅に関する方針を従業員に示したと回答。「全ての従業員に対して職場にとどまるよう呼びかけた」企業は約8%、「大部分の従業員に対して職場にとどまるよう呼びかけた」のは約41%で、半数近い企業が帰宅を抑制していたことが分かった。一方「原則として帰宅するように呼びかけた」企業も約36%あった。