Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
2017.12.24
# 進化 # 人類

ホモ・サピエンスが現われる前のアジアには誰がいたのか

こんな「小さな」人類も…!

洞窟で見つかった「小さすぎる人類」

2016年4月、インドネシア・フローレス島の港湾都市ラブアンバジョで4WDの車をチャーターし、内陸部へと向かった。険しい山道を3時間以上も走ったあと、ふたたび平坦な土地に出ると、あたり一面の水田地帯だった。どこか懐かしい感覚を抱きつつしばらく走り、やがて目的地の丘にたどり着いた。

丘の中腹の道路脇に車を停めて5分もしないうちに、事前に連絡しておいた管理人がやってきた。

「ホビットに会いに来たんだろう? リャン・ブア洞窟の入り口はこっちだ」

そう言って、小道をすこし進んだ先にあるフェンスの鍵を開けてくれた。

目の前には崖があり、巨大な洞窟が口を開けていた。入り口の直径は、50メートルほどはあるだろうか。中に入ると、ひんやりしていて、車を降りて数分ほどでかいた汗がすっと引いた。「リャン・ブア」とは「涼しい洞窟」という意味であることを、さっそく体感した。

涼気がただようリャン・ブア洞窟

「ここだよ」と管理人がぼくを手招きする。

洞窟に入って左側の壁に近い区画だ。そのあたりだけ、地面の色が違う。いったん地面を掘ったあとで、埋め戻したためにこうなっている。つまり、ここが「発掘地」なのだった。

赤いTシャツ姿の管理人が発掘調査をした場所を指さす

「人類学史上最大級の発見」とすらいわれ、世界中にセンセーションを巻き起こした古代型人類。身長わずか1メートルあまりの「ホモ・フロレシエンシス」の化石が、2003年、この場所を約6メートル下に掘り進んだところで見つかった。

ホモ・フロレシエンシスの「ホモ」は、ぼくたちホモ・サピエンス(現生人類)と同じホモ属(ヒト属)であることを意味する。人口に膾炙(かいしゃ)した「ホビット」という愛称は、トールキンの『指輪物語』に登場する「小さな人」にちなんでいる。日本での一般的な呼称は、フローレス原人。

管理人が言う。

「彼らは1万8000年前まで、ここにいた」

残念ながら、それは現時点では間違った情報だ。2004年に出された化石発見を伝える論文にはそう書かれていたが、のちに再検討されて、年代はもうすこし古いことがわかった。発掘された地層の年代からいえば6万年前まで、同じ場所から出てくる石器を考慮すると5万年前まで、と今は考えられている。

とはいえ、700万年におよぶ人類の歴史のなかで「5~6万年前」はかなり最近のことだ。この時期なら、アフリカを出てここアジアまでやってきたホモ・サピエンスと、なんらかの接触があった可能性も否定できない。

彼らはかつて、ぼくたちにとって本当の意味での「隣人」だったのかもしれないのである。

洞窟から徒歩数分のところに小さな博物館があり、そちらにも立ち寄った。

民家のような、ささやかな展示施設だ。発掘されたフローレス原人の全身骨格模型が、ガラスキャビネットに入れられて展示されていた。

原人の化石としては稀有なほど保存状態はよかったが、それにしても小さい!

その前に立ったぼくは、あらためて衝撃に打たれた。

とにかく、小さい!

頭骨など、両手で持ったらすっぽり包み込めるのではないかと思えるほどだ。サイズ感としては、まさに「子ども」だった。

.navContents .navContents_genre ul li:nth-child(1){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/-/img_b5e617833eedeaae7025842662ab132b647.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(2){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/-/img_2540ff88c35e25062301549b5eb16b52324.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(3){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/-/img_a7ba7310c85ff6d811201aa807669020476.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(4){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/-/img_eb63fc75c067be2b4e346d1177dd646b453.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(5){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/-/img_abe953ea8bbeca517ca1c1e8aea20264478.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(6){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/-/img_44a09474c6909310bd77737b2cf0d164611.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(7){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/0/a/-/img_0a2be7b2a33731b20cea2350fd4ae90a628.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(8){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/-/img_7e673dc9fefd51d9536a14475d3d9aee610.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(9){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/f/-/img_af821209af9c81edad6dc63aa854b0fb368.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(10){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/-/img_f072464bf99bcf4d42f011c34e4f8de1479.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(11){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/-/img_da7b1bac2e3db43a4d2760193fcfa9d8558.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(12){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/-/img_435be9c5b352044abf14eecffa80b28d542.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(13){ background-image: url(); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(14){ background-image: url(); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(15){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/-/img_ab53ea5ead6f29fedf249c9d00da02ca567.png); }
  • 【新刊案内】水の惑星「地球」
  • 【新刊案内】不完全性定理とはなにか
  • 【新刊案内】中学数学で解く大学入試問題
  • 【新刊案内】宇宙が見える数学
  • 【新刊案内】ブルーバックス科学手帳2025
  • 【新刊案内】ネットオーディオのすすめ
  • 【新刊案内】「腸と脳」の科学
  • 【新刊案内】誰も知らない素数のふしぎ
  • 【新刊案内】DNAとはなんだろう