auが今春発売するWIN端末のうち、W51CA、W51SA、W51H、W51Sの4機種は、新機能の「オープンアプリプレイヤー」を搭載する。オープンアプリプレイヤーは、Javaアプリを動作させるためのソフトウェア、いわゆる実行環境(VM)だ。
ドコモのiアプリやソフトバンクのS!アプリは、すべてJavaアプリである。auも、かつてはJavaアプリを採用していたが、現在のauケータイでは、より高度なプログラミングに向いたBREWアプリに移行している。
なぜauはJavaアプリを再度採用したのか、BREWアプリとの違いはどこにあるのか。
今回はKDDIのコンテンツ・メディア事業本部 コンテンツ・EC本部 コンテンツ推進部 ビジネスプランニンググループ 主任の織内 慶太氏、au営業本部 au営業企画部 サービスG 課長補佐の山下 義広氏、au商品企画本部 モバイルサービス部 サービス戦略グループ 課長補佐の榮木 志央氏、au商品企画本部 モバイルサービス部 サービス戦略グループリーダー 課長補佐の中馬 和彦氏にお話を伺った。
■ 「公式サイト=BREWアプリ」、「一般サイト=Javaアプリ」で棲み分け
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オープンアプリプレイヤーはBREWアプリリスト内にある(写真右)。オープンアプリのサンプルとして「もん太の説明」がプリインストールされている(写真左)
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――まず、オープンアプリプレイヤーの概要を教えてください。
織内氏
Javaアプリの実行環境です。BREWアプリとしてミドルウェアのように搭載しています。データをダウンロードして再生するという形式で、PCサイトビューアーやFlashプレイヤーと同じ位置付けになります。BREWアプリへの対応は従来と変わりません。
――なぜオープンアプリプレイヤーでJavaアプリに対応されたのか、その狙いはどこにあるのでしょうか。
織内氏
MNP導入に向け、先行優位な部分は引き続き強化しつつ、他社に追いつくべき部分、要望のある部分を強化しよう、という狙いから、Javaアプリの実行機能、オープンアプリプレイヤーを搭載しました。お客様の流出防止、流入促進を狙っています。
――既存のBREWとの違いや棲み分けはどういったところにあるのでしょうか。
織内氏
以前、auでもJavaをやっていましたが、一時期、アプリのプラットフォームがBREWとJavaが併存する形となり、わかりにくくなっていました。今回、Javaに再導入するにあたっては、JavaとBREWの位置づけをはっきりさせています。
公式コンテンツプロバイダーによるアプリは、引き続きBREWアプリで配信してもらいます。Javaによるオープンアプリは、あくまで一般サイト用、という位置づけです。オープンアプリは、アドレス帳に触るなどのネイティブにアクセスする機能を制限し、容量も小さく、審査をしないので品質も保証できないけど、誰でも自由に配信可能、という展開を考えています。
――公式のコンテンツプロバイダーはJavaアプリを配信できない、ということですか?
織内氏
基本的に品質をキープするという目的で、EZwebのメニューからたどれる公式サイトでは、BREWアプリを使ってもらいます。一方、一般サイトはJavaアプリを使ってもらう、とわかりやすく棲み分けをします。
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織内氏(左)と山下氏(右)
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――オープンアプリでは、KDDIはお金を取らない、と。これもオープン化の流れと言うことでしょうか。
榮木氏
お客様にも「有料でいいから高機能・大容量なアプリを使いたい」という人と、「品揃えがたくさんあって、簡単に使えれば良い」という人の、大きくは2通りがあると考えています。品質に対して対価を認めていただく路線は今後も続くでしょう。一方でそうではない、auがこれまで提供できなかったフリーのアプリが、オープンアプリプレイヤーで提供できようになります。共存はできるのではないかと。これが当初から考えていたことです。
――BREWよりJavaの方が新機種に素早く対応など、JavaにはJavaのメリットがあると思います。公式のコンテンツプロバイダーもJavaを使いたいというニーズがあるのではないでしょうか。
織内氏
そこは説明会を開催したとき、厳しい意見をもらいました。しかし「公式サイト=BREWアプリ」というわかりやすさを守るために、公式サイトでのJavaアプリ配信はお断わりしています。また新機種への対応が容易、という点も、Javaにしたら解決するかというと、そうとも限らないと思います。BREW側の問題点も改善していっているところです。
――公式コンテンツプロバイダーにすると、市場を食われてしまうという心配もあると思うのですが。
織内氏
説明会でいちばん問い合わせをもらったのは、そこですね。ミニゲームのコンテンツプロバイダー様は、市場が食われると心配しています。KDDIとしては、競合することを意識し、より質の高いコンテンツを提供してもらえるよう、提案しています。
――個々のアプリを紹介しないまでも、一般の開発コミュニティへのサポートのようなものとして、たとえばコンテンツコンテストなどをKDDIで行なう予定はないのでしょうか。
山下氏
自由にやっていただきたいですが、KDDIとしてなるべく口出ししないようにしています。その方が、オープンアプリの趣旨にあっていると考えています。
■ オープンアプリではピュアなMIDPをサポート
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榮木氏(左)と中馬氏(右)
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――Javaの仕様として、標準規格であるMIDPをサポートされていますが、これはどういった狙いがあるのでしょうか。
織内氏
仕様的なところでは、完全にピュアなMIDPをサポートしています。BREWアプリでは3Dエンジンなどを利用できますが、オープンアプリではそういった端末固有の機能はサポートしません。標準仕様のみです。一般コミュニティで開発しやすくするには、機種差分のないこうしたピュアな環境の方が有利、という狙いもあります。
山下氏
逆に完全にピュアな仕様なので、高機能なものは作れませんが、機能制限の中では完全に自由でキャリアの制限も受けません。
――ドコモやソフトバンクのJavaアプリとの違いや特色というのはあるのでしょうか。
山下氏
ぶっちゃけて言ってしまうと、Javaアプリだけで比較すると、オープンアプリプレイヤーに機能面での優位性は、あまりありません。他社のJavaアプリでは、大容量なものやネイティブ機能へのアクセスもサポートしていますが、auではそういった高機能アプリはBREWで展開しますので、オープンアプリではサポートしていません。逆に言うと違いはそのくらいです。
中馬氏
他社と比較するとそうなります。Javaには本来、「ネイティブアクセスに制限を設けることで、逆に自由に使えるようにする」という面があります。従来のBREWのスキームでフォローできない、「公開されたプラットフォームを使って自由にやりたい」という人に答えるのがオープンアプリプレイヤーです。auでは、今後もBREWアプリを強化していきます。
榮木氏
高機能・大容量なアプリは今後もBREWでやっていきます。JavaとBREWの、それぞれの優位点を生かし、展開させていきます。
――オープンアプリの配信は、基本的に誰でも勝手に、公式サイト以外なら自由に配信できるということでよろしいのでしょうか?
山下氏
そうですね。
――オープンアプリが通信した場合、その通信料金はダブル定額に入るのでしょうか?
榮木氏
アプリを探すまではEZwebの通信です。ダウンロードするときにBREWアプリであるオープンアプリプレイヤーに切り替わり、BREWアプリとして通信します。オープンアプリが通信する場合、BREWアプリとして通信し、オープンアプリからEZwebを起動するとEZweb通信となります。いずれも定額通信の対象です。
――通信の部分でいうと、BREWに比べるとやや通信量に制限がかかっているようですが、なぜなのでしょうか。
榮木氏
高機能なものはBREWアプリで、オープンアプリはあくまで簡易的なもの、という前提で使用を作りました。そもそも一般のゲームアプリくらいならば、さほど通信が発生するものではない、とも考えています。
織内氏
あとは通信事業者として、ネットワークの保護、という観点もあります。BREWアプリであれば、すべて審査をするので、通信パターンを把握できます。しかしJavaはどうなるかわかりません。通信量の制限をかけていないと、ネットワークに予想外な影響があるかもしれません。どのレベルに制限するかは難しい問題ですが、既存の一般アプリを調査した結果、このくらいが妥当なのではないかという結論になりました。
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オープンアプリプレイヤーの説明をするアプリ「もん太の説明」。山下氏はこのもん太の売り出しを密かに目論んでいるという
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――今後、高度なアプリが開発されることを見込んで、仕様拡張の可能性もあるのでしょうか?
山下氏
いまのところは考えていません。オープンアプリプレイヤーの本来の狙いである、一般クリエイターが作るJavaアプリには十分な環境だと考えています。通信量の問題に絞って考えると、通信対戦ゲームをやりたいとかであれば、BREWでやってもらえれば、と考えています。
カメラなど、セキュリティに関わらないネイティブ機能へのアクセスについても、いまのところは考えていません。お客様の要望をいちばんに考えているので、ニーズ次第でもありますが、機種依存を少なくして、いかにアプリを作りやすい環境を維持するか、というバランス取りが難しいところです。
――対応機種はいまのところ4機種ですが、今後、搭載機種は増える方向なのでしょうか。
榮木氏
今回は、短いスケジュールで搭載を提案し、それに乗っていただいたメーカーさんに搭載いただきました。今後も、搭載機種はできれば多い方がよいかな、と考えていますが、調整中の状況です。
――今後の展開が楽しみです。本日はどうも、ありがとうございました。
■ URL
オープンアプリプレイヤーのサービス説明(KDDI)
http://www.au.kddi.com/ezweb/service/open_appli/index.html
オープンアプリプレイヤーの技術仕様(KDDI)
http://www.au.kddi.com/ezfactory/tec/spec/openappli.html
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(白根 雅彦)
2007/02/08 12:10
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