Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

2012/12/10

サイモン&ガーファンクル、モーリス・ラヴェル、共通のモチーフ

サイモン&ガーファンクルのある曲を聴いていて、ふと思いました。
以下、長々と音楽の勉強です。
独学なので、間違いがいっぱいあるかと思います。





■Simon & Garfunkel -  Old Friends
冒頭で繰り返される「Old Friends」のフレーズ。
移動ドだと、「ミー、シー」ですね。
耳に残るメロディーです。



この曲を聴いて思い出したのですが、
モーリス・ラヴェルのオペラ「子供と魔法」にも、「ミー、シー」が登場します。

このオペラは、登場人物ごとにテーマ曲=モチーフ が用意されているのですが、
このうち「ママのモチーフ」は、Old Friendsと同じメロディーを持っています。
聴いてみましょう。

■ Maurice Ravel - 「子供と魔法」より
    宿題を全然やってない「僕」を、偵察しに来たママ。
    「ぜんぜん進んでないじゃないの!」と怒り出す。

特徴的な「ミー、シー」の繰り返しが、「ママのモチーフ」です。
先ほどの「Old Friends」といっしょですね。


この作品では、同じフレーズが繰り返し登場します。
引き続き、オペラ終盤の「ママのモチーフ」を聴いてみましょう。

■ Maurice Ravel - 「子供と魔法」より
 ママとの喧嘩でイライラした僕は、庭の動物たちに八つ当たりして、いたずらをする。
 怒った動物との乱闘騒ぎに巻き込まれ、僕はフラフラになってしまう。



   0:00- 僕は、ママのいない孤独を感じ、おもわず「ママ!」と叫ぶ。
       これを皮切りに、動物たちの大暴れがはじまる。
   2:20- 乱闘騒ぎで、リスがケガをした。それを見た僕は、リスを手当する。
       そのうち僕は疲労で倒れこんでしまう。
       動物たちは、「倒れちゃった。どうしよう、ママをよばなきゃ」と大慌て。
   2:54- 動物たちが「ママ!」「ママ!」と呼びかける。

   3:13- 「ママのモチーフ」再登場。

   3:31- 動物たちの美しいコラール。
       「彼はやさしくてかしこい子です、ママ、介抱してあげて」
   5:21- ママは、倒れている僕にそっと手を差し伸べる。
   5:45- 最後に僕は、「ママのモチーフ」をささやく。
 

めでたしめでたし。
こんなに簡単な「ミー、シー」の2音が、巧みな編曲によって千変万化の彩りをもちます。
すばらしいです。




********

ここからはマニアックな話になります。
「ミー、シー」というメロディーに、
どんなコードをつければオシャレに聴こえるか、上記を元に考えてみます。

紹介した2曲は、「ミー、シー」というメロディーは共通しているんですが。
実はコードの付け方が違うんです。
ざっくりと聴きとって、意図を読み取りましょう。
 

   ■Old Friends
   ・ IV△7 → I△7     (ミ(7th)→シ(7th))

   →「アーメン終止」という手法。進行感が薄く、柔らかいイメージになる。
     サティの「ジムノペディ第1番」と同じ使い方。


   ■子供と魔法 ママのモチーフ
   ・ IIm(9) → V        (ミ(9th)→シ(3rd))

   →ツーファイブで止め、I に進まない使い方。
     たゆたう感じ、浮遊感が出る、次の展開に期待させる、といったイメージ。
     フランスっぽい。


   ■子供と魔法 ママのモチーフ(最後)
    ・ V7(13) → I△7   (ミ(13th)→シ(7th))
 
   →ドミナントモーションとテンションを組み合わせた強力な進行。
     13thの鮮烈な音が、感動的なオチにピッタリ。


※この7thとか13thというのは、ミ、シの役割を表す数字です。
和音の中の、どの音を担当するか、を表しています。
I△7           ド・・ソ・      だったら、ドを1st、ミを3rd、ソを5th、シを7th といいます。
IIIm7           ・ソ・・レ      だったら、ミが1st、シが5th。
IV△7(9,11)   ファ・ラ・ド・・ソ・ だったら、ミが7th、シが11th。

コードが変われば、ミの呼び名、シの呼び名が変わる、というのがわかります。


さて、「Old Friends」、「子供と魔法」の3つのコードワークには共通点があります。
それは、「ミー、シー」というメロディーが、
コードの中で、「テンション」の役目を果たしている、という点です。
テンションとは9th、11th、13thといった大きい数字のことを指します。

テンションが含まれるコードは、それだけでオシャレに聴こえます。

ということで結論をいうと、
「ミー、シー」の数字を大きくする=テンションになるようにコードを付けるのが、
オシャレの秘訣です。


こっから応用です。

例えば、「ミー、シー」というメロディーに対して
 ・ I      →  IIIm        (ミ(3rd)→シ(5th))
 ・ VIm   →  V7      (ミ(5th)→シ(3rd))
 ・ IIIm   →  VIIm7-5  (ミ(1st)→ シ(1st))
とコードをつけると、どちらの数字も小さいのであまりオシャレにきこえません。

これをうまいこと改良して、
 ・ I      → VI7(9)         (ミ(3rd)→シ(9th))
 ・ VIm  →  IV♯m7-5    (ミ(5th)→シ(11th))
 ・ IIIm  →  II♭m7-5     (ミ(1st)→シ (7th))
とコードをつけると、シの数字が大きくなった=テンションになったので ※注
オシャレ度が上がります。 

とても単純なようですが、効果的です。
この考え方は、例えば渋谷系のような、キャッチーな音楽を作るにはとても有効です。

暇があれば、実例を作ってみたいところです。


※注 7thは実際にはテンションではありませんが、役割としては同じでいいかなと思ってます。

0 件のコメント:

コメントを投稿