「ポータブルオーディオを凌駕するケータイ」という目標を掲げ、2006年秋冬モデルから音楽機能のさらなる強化に乗り出したau。音響メーカーであるヤマハの協力のもと1機種ごとにチューニングを行い、高音質化を図ったという。au携帯の“音”はどう進化したのか、開発を手がけたKDDIとヤマハの担当者に聞いた。
番号ポータビリティ前の発表時、KDDIはau携帯における戦略的な柱の1つとして「着うたフルなどで評価を得た“ケータイで音楽”をさらに次のステージへ推し進める」ことを掲げた。その戦略の1つ「ケータイの本格的な音質向上」のためのパートナーとして選んだのが、長年の音楽・楽器づくりで“音”に対する高いノウハウを持つヤマハだ。
auの2006年秋冬モデルは、ヤマハ製の音源チップを搭載。さらに、筐体設計に対する音質面でのコンサルティングや機種ごとの音のチューニングをヤマハの全面協力のもと実現した。
この強力なパートナーシップで両者が目指したのは「原音の追及」だ。ケータイで再生する圧縮音楽を、CDの原曲に近づけるために一体どのような工夫が盛り込まれているのだろうか。
auの2006年秋冬モデルに搭載されたヤマハ製音源チップには、「DBEXTM」(DBEXはDiMAGIC社の商標。以下TMは略)という機能が内蔵されている。
「着うたフルなどの音楽データは、ファイルサイズを小さくするために圧縮されています(HE-AAC/ビットレート:48kbpsほど)。そのためにどうしても高音域の周波数成分が失われてしまう。“DBEX”はこの失われた音の成分を補完し、さらに中音域のざらつきなどを改善する技術です」(ヤマハ 向嶋氏)。
DBEXにより音に伸びや広がりが戻り、「圧縮によって失われた音の盛り上がり感や厚みが、元の状態に近づく」(向嶋氏)という。なおDBEXは、着うたフルなどの音楽再生のほかに「W43H」や「W44S」に搭載するワンセグ放送の音声出力時にも有効となる。
ただし、“信号”のみを改善しただけでは実際に人間が聞いて“いい音だ”と感じるまでにはならない。そのため「出口をどうするかが大切」(山木氏)だった。
今回、「W41SH」「W43S」「A5522SA」の3機種を除く、2006年秋冬モデルの9機種に広帯域の音も再生できるソニー製イヤフォン「MDR-E0931」が標準で付属する。このイヤフォンを使用した時にどう聞こえるかというついて、ヤマハは端末ごとに出力調整を行った。
「端末によって回路の配置なども個々に違いますから、それぞれに微妙なクセがあります。DBEXで改善された信号が最適に出力されるよう、このクセについても端末ごとに補正しています」(山木氏)。
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