業界動向
応募総数約2万人! 4Gamerの読者アンケートから日本のオンラインゲーム市場を読み解いてみる
■国内オンラインゲームのプレイヤー層分布図
さて,なんだか年々「集計記事まだ?」というプレッシャーが強くなっている気がするこの頃だが,今回もまた,ちょっとした分析と共に,アンケートの集計結果を公開してみたいと思う。
本記事で公開するのは,1万9655通の応募の中から,多重投稿など無効と思われるサンプルを除外した,1万8650人分のデータを集計したもの。例によって,アンケート全体の集計に加えて,タイトルごとに絞ったプレイヤーの属性分析を行ってみた。
ちなみに今回集計の対象となったタイトルは,オンラインゲームとコンソールゲームを合わせてなんと300本以上。
いやー,細かい数値の羅列を眺めていると,シミュレーションゲーマーとしての血が騒ぎますよ,ええ。
ちなみにこちらの記事では,そんな集計結果の中から,とくにオンラインゲームに絞った分析をお届けしたいと思う。コンソールゲームの分析に関しては,別途「ネットの記事って売り上げにつながってるの? アクセス数と売り上げ本数の関係を分析してみた。2009年ゲームソフト売り上げ本数ベスト30も併せて公開!」で販売本数などと絡めているので,興味があればそちらも参照してほしい。
ともあれ,2万人近くのサンプル数は,ゲーム市場の動向を追うアンケートとしては,おそらく国内最大規模だと思う。そんなアンケートの集計結果からは,日本のオンラインゲーム市場のどんな姿が見えてくるのだろうか。早速その内容をお届けしよう。
ネットの記事って売り上げにつながってるの? アクセス数と売り上げ本数の関係を分析してみた。2009年ゲームソフト売り上げ本数ベスト30も併せて公開!
平均年齢は27.6歳。高校生〜社会人層が中心の4Gamer読者
要するに,4Gamerの読者像を簡素に表現するならば,「学生,および比較的若い独身男性ゲーマーが中心」といったところ。……まぁ,独身かどうかは実はデータを取ってないのだけど,「ラブプラス」の記事で大盛り上がりするぐらいなのだから,きっと独身が多いに違いない,と勝手に思っています。
いずれにせよ,4Gamer全体の読者像としてはこのような傾向になる。男女比の偏りからしてお分かりかとは思うが,今回公開するデータは,そうした4Gamerの「読者層」を踏まえたうえで参考にして頂ければ幸いだ。タイトル個々のデータに関しても,それがそのタイトルの実際の属性を示しているとは限らないが,4Gamerに親和性の低い低年齢向け,女性向けのタイトルなどを除けば,それなりに筋の通ったデータになっているのではないかと思う。少なくとも,ネット界隈のゲーマー層の動向を把握する一助にはなるはずだ。
年齢&PCスペック:じわじわと平均年齢が上がっていく老舗タイトル
■国内オンラインゲームのプレイヤー層分布図:年齢&PCスペック
さて,例によって今回も平均年齢とPCスペックを軸としたタイトルの分布図を作成してみた。今年の話題作「The Tower of AION」や,昨今盛り上がりを見せているブラウザゲームの一つ「ドラゴンクルセイド」あたりの立ち位置が見どころだろう。ハイエンドな3Dグラフィックスが売り物のAIONはハイスペック志向寄り,古いPCでも手軽に遊べるドラゴンクルセイドがロースペック寄りなのは,まず予想通りといったところか。
以前から続いているタイトルに関しては,前回の集計から比べると間に半年しか期間が空いていないこともあるが,表を眺める限り急激な変化は見られない。とはいえ,「モンスターハンター フロンティア オンライン」がやや高スペック寄りになっていたり,逆に「ファイナルファンタジーXI」が低スペック寄りに推移しているなど,小さな動向の変化はあるようだ。
一応説明しておくと,この図は相対的な分布図なので,ファイナルファンタジーXIのプレイヤーのPCスペック平均自体が下がっているわけではない。他のタイトルと比較して,“高スペック化の流れが遅い”という意味である。例えば,であるが「ファイナルファンタジーXIV」に備えて,PCの買い控えをしているのがデータとして現れたのかもしれない。
また「ラグナロクオンライン」やファイナルファンタジーXIなどといった老舗タイトルは,年を重ねるごとに着実に平均年齢が上がってきており,若返り施策の必要性が求められている雰囲気。とくにファイナルファンタジーXIは,続編であるファイナルファンタジーXIVがどういったプレイヤー層を引き込むのか,そしてXIのプレイヤーとどう棲み分けをしていくのかといった部分の施策が,大きな影響を及ぼすことは間違いない。
一方で,「ファンタジーアース ゼロ」「スカッとゴルフ パンヤ」「メイプルストーリー」あたりは,相変わらず同じ平均年齢を維持しており,プレイヤーが入れ替わりつつも,人気を維持している傾向が見て取れる。このあたりのオンランゲーム会社各社の運営戦略の違いは,詳しく見ていくとなかなか興味深い。
ただメイプルストーリーといえば,これまで常に一番左下……つまり,低年齢&ロースペック志向を代表するタイトルだったのだが,今回の集計結果では,プレイヤーのPCのスペックがやや高い傾向が見られた。理由を探ってみると,年齢層はさほど変わらないものの,FPS系のプレイヤーが多く流れ込んでいるということが分かった。この結果が今回だけのものなのかどうかは分からないが,低年齢向けのオンラインゲームとしては絶大な人気を誇る作品だけに,今後の動向が気になるところだろう。
ともあれ,全体的な傾向としては,やはり若い層にはアクション性の強いゲームが好まれ,高年齢寄りになるにつれ,非アクション要素の強いMMORPGやシミュレーションゲームの割合が高くなる。今回はドラゴンクルセイドしかピックアップしていないが,最近流行のブラウザゲーム類がどういった分布になっているのか。日本のオンラインゲーム市場の流れを探る意味で,非常に興味深い。
年齢&消費金額:アンケートの項目を見直し見えてきたものとは
■国内オンラインゲームのプレイヤー層分布図:年齢&消費金額
こちらは,平均年齢と「月にオンラインゲームに使う金額」の平均を軸にしたタイトルの分布図だ。ここでいう消費金額とは,あくまでも“遊んでいるオンラインゲームすべて”に使う金額となっており,そのタイトルに対して使っている金額ではない点に注意してほしい。
ちなみに,オンラインゲームに使う金額に関しては,実は今回の調査から,質問の選択肢を若干変えさせてもらっている。以前までは選択肢の最高額が「1万円以上」ものだったのだが,今回は,それを「5万円以上」にまで引き上げている。
変更理由を簡単にまとめておくと,アイテム課金が主流となっている昨今,無料で遊ぶ層とお金を払う層の2極化が進んでいる傾向が考えられたからだ。今回の集計の結果を見る限りは,選択肢の幅が広がったことで,各タイトルのより正確な傾向が掴めたのではないかと感じている。
さて,全体を眺めてみると,アクション寄りのオンラインゲームの消費金額が少ない傾向にあり,MMORPGは,月額課金系のタイトルを除けば,使う金額が多い。「Warhammer Online」などは,各データを見る限りでは紛れもなくコアプレイヤーが中心なのだが,月額課金であるためか,使うお金自体はそれほどでもないという点は,ある意味で示唆的な結果だといえるだろう。
ただ低年齢層が厚い作品は,やはり消費金額も少なめだ。こればっかりは,お小遣いの限度による制限なのだと思うが,そんな中で「コズミックブレイク」や「トリックスター0 -ラブ-」「RED STONE」が高い位置を確保している点は,見どころかもしれない。
とくにRED STONEなどは,実は年間で30億円以上を稼ぐ,国内有数のビッグタイトルだったりするのだが,正直なところそれほど新しいゲームでもないし,グラフィックスなども,お世辞にも綺麗とは言えない作品である。そんなタイトルが「なぜ?」と思わなくもないのだが,この図を見る限り,それは(主に)低年齢寄りかつ収益性が高いという,国内オンランゲーム市場の隙間をうまく押さえている結果だ……という分析はできるかもしれない。
さらに「チョコットランド」なども,超ローエンド寄りのプレイヤー層ながらも,使う金額はそれなりに多いという“ビジネス的に美味しいポジション”をうまく押さえており,低年齢&ロースペック路線のタイトルも,ビジネスとして侮れないことが分かる。
一方で,図の右に行けば行くほど競争が激しいのは一目瞭然だ。年齢層に対するMMORPG自体も過剰供給といった雰囲気だし,消費金額の高いプレイヤー層ともなれば,さらに少ないパイの奪い合いになっている。AION,FF14クラスの大作ならいざ知らず,中堅どころのタイトルがこの位置で戦っていくのは,いろいろな意味で難しそうに見える。その意味では,ローエンド層を捉えた「エンジェル戦記」や,今回消費金額がもっとも多いタイトルとなった「LEGEND of CHUSEN -誅仙-」あたりも,注目しておきたいタイトルだろう。
“ゲームの話題”はどうやって広がっていくのか?
さて,オンラインゲームからは少し離れるが,今回のアンケートでは,ネット時代における“ゲームの話題の広がり方”,すなわちクチコミの動向についての項目を設けていた。具体的には,ゲームの話題をどこで,あるいは誰とするのか(口頭やネットの書き込みで)をチェックしてみたので,ここではそれをとりまとめ,お伝えしよう。
結論としては,若いプレイヤーほどゲームの話題を頻繁に行い,社会人になるのをキッカケにして面と向かって話す機会が大きく減ってしまう傾向にあるようだ。まぁ……,ゲーム系の会社でもない限り,社内でゲームの話題で盛り上がるのが珍しいというのは分かるが,Blogなどといったネットツールも,若い人の方が活発に活用しているところは興味深い。
また,2ちゃんねるは高校生〜大学生,ニコニコ動画は中学生が多めの割合になっているところなど,それらのコミュニティが,よくも悪くもゲームをネタに盛り上がれる場所になっていることが分かる。中学生のプレイヤー層は,価格.comやAmazonのコメントを参考にしている割合も高いが,このあたりは,純粋にネットリテラシーの差が現れている一例のようにも思える。
こちらは,タイトル別に割合を出してみたものだ。目を引くのは,やはり「トモダチコレクション」だろうか。「家族」と答えた割合が群を抜いて高い。これは「Wii Sports」や「Wii Music」ほか,任天堂のゲームの多くに見られる傾向であり,つまりはゲームが,家族のコミュニケーションツールになっているという雰囲気なのだ。
筆者の子供の頃といえば,ゲームはあくまで“子供の玩具”であり,親と子供が一緒にゲームを遊ぶ……という印象はほとんどなかったわけだが,ファミコンが生まれてから25年が経った今,当時の子供も今や人の親。ゲームというものを理解したうえで子供に買い与える,あるいは子供と一緒に遊ぶためにゲームを買う時代になっているのかもしれない。
ディズニーアニメのマーティングにおいては,子供よりもむしろ親に焦点を当ててているケースが少なくないと聞くが,ゲームでもそういった売り方がより求められる時代に入っているのだろう。
※ちなみに「こちらの記事」でも,社会学者の鈴木謙介氏が似たような分析を行っている。興味がある人は,そちらも参照してほしい。
まとめ&オンラインゲーム基礎データ表
というわけで,今回の分析記事はここまで。あまりに調査対象が膨大なため,なかなかタイトル個々にまで話が及ばなくて申し訳ないのだが,いくつかは興味深いデータがお見せできたのではないかと思う。
こちらも毎度恒例ではあるが,最後に現在サービス中のオンラインゲームの中から,任意で選んだタイトルの基礎情報をまとめて掲載しておくので,興味がある人はそちらも参考にしてほしい。
この表では,平均年齢,平均消費金額(オンラインゲーム),平均プレイ時間,そして使用PCのメインメモリ量という,四つの項目を用意。冒頭でも述べたとおり,これはあくまでも4Gamer読者というフィルタを通してみた結果であり,このデータがそのままタイトルの正しい属性データであるかどうかは保証できないが,上記の分布図と併せて見ていけば,いろいろと参考になるはず。日本のオンラインゲーム市場の傾向を分析する一助にしてもらえれば幸いだ。
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