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[Gamefest 08#02]ダウンロードコンテンツで儲けるには? アイマス開発者が語るダウンロード販売成功の秘訣
大塚氏は,最初に「ダウンロード販売に関しては,Xboxがゲーム業界で一歩リードしている状態だと思う」としながら,Xbox LIVE マーケットプレースの近況を報告。曰く,
・累計5億件のコンテンツがダウンロードされた
・数百億マイクロソフトポイントが利用されている
(1000マイクロソフトポイント=1480円)
・現在,月間で350万曲が販売されている
・LIVEメンバーの70%以上がなんらかのコンテンツを
ダウンロードしている
・LIVEメンバーの40%がPDLCの購入経験がある
とのことで,ダウンロードコンテンツの売り上げは,年々順調に拡大しているそうだ。大塚氏が公開した資料を見る限りだと,マーケットプレースにおける売り上げは,2006の第4四半期を境に急激に伸びているようで,その後は,キラータイトルの動向に左右されつつも,常に一定数の需要があることが見て取れる。
大塚氏が語るところによると,ダウンロードコンテンツで100万ドル以上の売り上げを記録したタイトルは,現時点ですでに21タイトルもあるようで,その中には,アイマスや「エースコンバット6 解放への戦火」などの名前も。まぁPDLCの成功事例としてよく話題になっているアイマスはともかく,その手の話にはあまり名前が挙がってこないエースコンバット 6も100万ドル以上の売り上げを記録していたのは,少し意外かもしれない。
大まかなマーケットプレイスの状況を一通り説明したあと,大塚氏は,PDLCが成功するための秘訣として,タイトルの発売からあまり時期をあけずにPDLCをリリースすること,ゲーム内から直接アイテムを買えるような「インゲーム マーケット」の必要性など,いくつかの注意点を提示した。
ちなみにこの中で個人的にもっとも興味深かったのは,タイトルの発売からユーザー数が最大になる平均日数(アクティブユーザーがもっとも多くなる時期)の話で,FPSが50日,アクション,スポーツ,RPGなどは10〜15日程度でピークに達するという話だった。FPSというと,ゲーマー御用達というか,発売日に一気に売れるようなジャンルというイメージがちょっとあったのだが,日本はともかく,海外だと“じわ売れ”するジャンルだということなのだろうか。
ともあれ大塚氏は,「PDLCは間接的に中古対策になる」「ダウンロード販売は2012年には3000億円超の市場に成長する見込み」など,PDLCの可能性を語りつつ講演を終了。PDLCの今後に関しては「月/週ごとにシナリオが配信されるタイプのRPG/アドベンチャーゲームや,オンラインゲームにおけるアイテム課金などといったスタイルが定着していくかもしれない」と,将来の展望についても一定の見解を示し,集まったゲーム開発者たちに,PDLCを念頭においたゲーム開発を促していた。
アイドルマスターといえば,上記で大塚氏がその重要性を説いていたインゲーム マーケットが,もっとも上手く機能した成功例なわけだが,田村氏の話を聞く限りだと,コンテンツの売り方や見せ方を含めて,企画レベルから練り込んでいく必要がありそうな雰囲気。単純に物(商品)を並べればいい……というわけではないようだ。
ともあれ,田村氏の話を聞いていると,アイマスという作品がユーザー心理を鋭く分析したうえで,コンテンツ購入に至るまでの導線を巧みに構築している作品だと,いまさらながらに感心させられた次第。
例えば本作では,インゲーム マーケットを,毎月無料で配布する「衣装カタログ」という形式で行っており,このような形式にすることで,通常のマーケットプレイスでは難しい,快適な閲覧性や分かりやすさ,通販カタログを眺めるような感覚を実現しているのだとか。またダウンロードコンテンツも,第一回めの配信分は無料として,「コンテンツを購入する楽しさを,まず体験してもらえるようにした」など,アイマスがパッケージゲームらしからぬ考え方で展開されてきたことを,改めて認識させられる。
まぁこの手の手法は,オンラインゲームではさほど珍しいやり方ではないのだが,パッケージベースのタイトルでそれが実施され,また成功したことには大きな意味があるといってよいだろう。
ちなみにアイマスの追加コンテンツに関しては,だいたい2〜3人のデザイナーが常駐して日々制作を行っているという話。田村氏が語るには,「アクセサリは,実作業で2〜3日。企画期間を含めると1週間かそれ以上」「衣装は,モデリングデータの作成が1週間,ただそれをゲーム中に実装するにあたっての調整作業などが結構大変で,全体の工程としては1ヶ月くらい」と,コンテンツの制作については結構な労力が掛かっているようだ。田村氏曰く,「言ってしまえば採算度外視といってよいくらい。ユーザーさんは高いクオリティを求める傾向があり,生半可なものは作れない」のだという。
またコンテンツの売れ筋については,やはり王道とも言える“可愛い衣装”の人気が高いようで,ちょっとネタっぽいようなアイテムは,ネット上で話題にはなるが,売り上げという意味では今ひとつとの話も。値段によって売り上げが上下する傾向はあまりなく,あくまでそのコンテンツが魅力的かどうかが売り上げに直結するようだ。
これは余談だが,現在のアイマスの開発者には,“元アイマスファン”という人間が少なくないらしく,ファンが望む商品開発が出来ている理由としては,そういった部分も少なからずあるのではないか? と田村氏は語っていた。氏は「親心」という表現を使っていたのだが,アイマスのファンには,キャラクターのより可愛い姿を見たい,晴れ姿を見たい,というような強い欲求があるという。
……なんというか,「親心」という表現が非常に興味深いと思ったのは筆者だけだろうか。インディーズバンドのファンが「〜は私たちが育てたのよ!」という心理に近いのかもしれないが,まぁ門外漢にはなかなか理解できない繊細な部分なのは確かだろう。
講演が一通り終わったあと,質疑応答の時間が設けられた。業界関係者もアイマスへの関心が非常に高いようで,ほかのセッションよりも活発に質問が飛びかっていたのは印象的。なかには,「あまりに多くのアイテムが追加されると,ついていけないユーザーさんが出ると思うが,そういうお客さんに対してはどう思っているのか」など,やや詰問に近い(?)ような質問も見受けられた。
田村氏はそれに対し,「アイテムを豊富に用意するのは,全部買ってもらおうというよりは,バリエーションを増やして,数あるアイテムの中から好みのものを見つけてほしいという意味合いが強い」と返答しながら,「たくさん買って頂ければもちろん嬉しいですが,無理をしないでください,という気持ちです」と,その心境を語っていた。
現在は,「月々の配信コンテンツを作成しながら,年末年始に向けた企画をあーだこーだ話し合っているところです」という田村氏。ニコニコ動画など,Web界隈のムーブメントにも影響を及ぼしつつ,熱狂的な盛り上がりをみせるアイマスブームはいつまで続くのか。ゲームのダウンロードコンテンツの将来を占ううえでも,「アイドルマスター」の今後に注目していきたい。
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