イベント
Webポータルの巨人とケータイゲームポータルの巨人が手を結んだ「Yahoo!モバゲー(仮)」発表会レポート
ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏は,この協業によってより広い客層により高品質なコンテンツを,ゲームデベロッパーに新たなビジネスの場を提供できるとし,同時に海外のソーシャルゲーム市場が急成長を遂げており,今後も高い成長を見込めるとしている。
ソーシャルゲームはYahoo!としても無視できない市場であり,ケータイでソーシャルゲームを展開するDeNAとの協業は願ってもない話なのだろう。両社とも,国内でのPC版ソーシャルゲームの展開ではまだまだ勝負はついていないとの考えのようだ。mixiなどに対して後発となることもとくに問題とはしていないようだ。
PCとケータイが連動するというモデルは,Yahoo!が目指すエヴリウェアサービスともシンクロし,電車の中でゲームを楽しみ,家に帰ったらPCで続きを楽しむといったスタイルの提案は確かにソーシャルゲームと親和性がよさそうである。
ディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は,国内SNSでも低年齢層が大半を占めるモバゲーと,高年齢層が多いYahoo!ゲームのユーザーの親和性のよさに注目していた。
Yahoo!にとっては収益の見込める新コンテンツを追加し,DeNAにとっては,ユーザー層をPCユーザーにまで広げ,とくにARPU(Average Revenue Per User:ユーザー一人あたりの収益)の高い30代の獲得を目指しているという。DeNAはケータイではすでに確立した市場を抱えているものの,PCでのソーシャルゲーム,とくに海外ソーシャルゲームの主力となっている30代以上のユーザーが持つ高いARPUが魅力的な市場に映るようだ。
ソーシャルゲームというものが爆発的な広がり方をしているのは,それが「ソーシャル」だからである。Web上の単発的なカジュアルゲームとは違い,バイラル効果,コミュニティ効果などが相乗効果をもたらし売り上げが伸びる。一人でやっているなら,課金アイテムを買ったりしない人は多い。友達とやっているから,続いているゲームというのも多いはずだ。
そういった意味でいえば,Yahoo!はソーシャルゲームの基盤となるソーシャルグラフをほとんど持っていない。ソーシャルゲームは,ソーシャルコミュニティを前提として語られるべきものだが,PC版については,その基盤なしで話が進みつつある。メインターゲットとされていると思われる「30代カジュアルゲーマー層」に限っていえば,モバゲーでのカバー率は低い。こういう視点で見ると,両社は決して強者ではなく,むしろ弱者側であるとさえいえるかもしれない。
ちなみに,Yahoo!JAPANはソーシャルコミュニティを持っていないわけではない。「Yahoo! DAYS」というSNSが以前から公開されている。ただし,発表会ではDAYSという単語は一言も挙がらなかった。巨大な会員数を背景としてなお,ソーシャルという分野では成功は約束されていないことを示す例だといえるかもしれない。
また,スケジュール面でもやや不安が残る。すでにソーシャルゲームを展開しているところは当然参入を検討するだろうが,これまでの経験から,こういったものではローンチタイトルになれるかどうかで収益が大きく違ってくることも身に染みていることだろう。
Yahoo!モバゲーは,PCと携帯での連動ということで,双方のアプリ開発が必要なこと,さらに連動に関しての動作検証などで,開発負荷は一般的なソーシャルアプリよりも一段高くなると思われる。初夏に開発環境が提供されて,晩夏にサービスが開始されるということになると,長く見積もっても2か月。各社携帯電話への対応を2か月で完了できるかというのは,なかなかシビアではないだろうか。
メリット,デメリットの両面でなかなか面白い展開になりそうなYahoo!モバゲーだが,一般ユーザーがいかなる反応を示すかに注目したい。
- 関連タイトル:
Yahoo! Mobage
- この記事のURL:
Copyright (C) 2010 DeNA Co.,Ltd. All Rights Reserved.
Copyright (C) 2010 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.