『精神病理学とは何だろうか 増補改訂版』
松本 雅彦 19960928 星和書店,363p.
last update:20110303
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松本 雅彦 19960928 『精神病理学とは何だろうか 増補改訂版』,星和書店,363p. ISBN-10: 4791103300 ISBN-13: 978-4791103300 3990
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内容(「BOOK」データベースより)
鋭い視点から精神病理学という難解な領域を専門家以外の人にもわかるよう興味深く綴る。一般的な解説だけではなく、批判、精神医療に果たしうる展望等、精神病理学の存在理由を独自の視点から示した名著。最良の入門書。
内容(「MARC」データベースより)
鋭い視点から精神病理学という難解な領域を専門家以外の人にもわかるよう興味深く綴る。精神病理学の存在理由を独自の視点から示した入門書。
■目次
1 はじめに―精神医学はどのようにして成立しているのであろうか、その一側面
2精神医学の中に占める精神病理学の位置
3 精神医学の概史―精神病理学の成立に向けて
4 精神病理学の成立
5 戦後の精神病理学の動向
1 アメリカの力動精神医学
2 ドイツの了解人間学、現存在分析、発病状況論
3 反精神医学の昂揚
6 日本の精神病理学の歴史と現状
補遺:学会闘争後の精神病理学
7 精神病理学の存在理由は―結びに代えて
■引用
旧版のあとがき 353-
「本書は、一九八五年から一九八七年まで九回にわせて季刊誌「精神医療」(悠久書房)に連載したものをまとめたものです。一冊の本にまとめるにあたり、若干の修正と文献を中心とした注をつけるだけにとどめました。」(松本[1996:353]
「私自身精神病学を専門とするものではなく、一介の臨床医にすぎません。そのような精神科医がこれまで精神病理学というものをどう齧ってきたのか、どう眺めてきたのかの報告にすぎず、連載を続けながら私はこの二十年の復習をしてきたのかもしれません。カッコヨクいえば、精神科医としての二十年の営みを振り返りながら、自分なりの再度の論点の整理をここで試みたかったのだともいえます。
といいますのも、精神科医となって四〜五年目のあの一九六九年当時、私も学会闘争の後衛部隊としてその闘争に参加し、これまでの精神医学・医療のあり方に異議申し立てを行った一人だったからです。それは、私の携わっていた粗悪な臨床現場と学会で報告される麗々しい論文発表とのギャップがあまりに大きく、このギャップはどこからきているのだろうという疑問を素朴に疑問として投げつけたにすぎないものでした。多くの患者たちが狭い鉄格子の中に閉じ込められ、その中から精神科医に興味のある症例のみが選ばれ、精神病理学の考察の対象とされているにすぎないように思われたのです。私たちは、この状況を「九十九人の犠牲の上に立った精神病理学」として批判したのですが、その批判はいわば「外」から精神病理学を批判したにすぎないものでした。<0354<精神病理学を成立せしめている外的な諸条件を盾に批判したにすぎず、精神病理学そのものを「内側から批判的に捉えるところにはいたっていませんでした。現在の日本の精神医学・医療界の中で「精神病理学はこれでいいのか」という素朴な疑問とともに、精神病理学そのものをどう考えるかが、闘争後の私たちに課せられた課題として残されたように思われたからです。」(松本[1987→1989→1996:354-355])
あとがき 359-360
「本書『精神病理学とは何だろう』は、第一版が一九八七年、第二版が増補修正の上一九八九年に、悠久書房から刊行されました。その後悠久書房が営業を停止したため、本書が書店の棚に並ぶことはなく、周囲の若い先生たちからの購入の希望にも応えられない状態がしばらくつづきました。本書の復刻が今日でもはたして意味があるのかどうか、若干の疑問はありましたが、星和書店にお願いしましたところ、快く復刻版の刊行を受諾していただきましたので、あえて再び本書を世に問うことにしました。第一版から十年近くを経てますので、いくらかの加筆訂正および補遺を施しましたが、精神病理学に対する基本的な姿勢はさほど変わってはいないと考えています。また、本書の成り立ちの背景も知っていただきたいと考えましたので、それを綴った旧本の「あとがき」も、あえてそのまま掲載させていただきます。」(松本[1996:359])