魚丼 新たな視点 (ブレードランナーに出てくる動物を調べてみよう-番外編-)
今回は 「ブレードランナーに出てくる動物を調べてみよう」 というテーマの番外編、
デッカードの食べていた魚丼の魚 についての記事です。
番外編にしたわけは、本編には映っていないからです。
ワークプリントと未公開映像集に映っています。
さて、ここに一本の歴史的なVHSテープがあります。
1999年に出回ったワークプリントの海賊版です。
映画館でスクリーンをビデオカメラで盗撮したという、まことにアカンしろものです。
これはイーベイで出ました。
ダッチオークションというちょっと変わった方式で、複数出品で
入札価格が低いほうからさかのぼって出品数の50までが落札になるというやつ。
つまりこの海賊版をリリースした人物は金目当てじゃないと言いたかったんでしょう。
隠し撮りなんで人物は映りこんでるわ、咳払いは入ってるわ、最初は手ブレがひどいわで、
まあ臨場感あふれること。
そして問題のシーン。デッカードの手元に置かれた料理が映りました。
↑他の観客のアタマ(笑)↑
「エ、エビだったのか!」
そう、画質の悪さから、エビに見えたわけです。
私、それをTVC-15さんを通じて発表しちゃったもんだから、いまだに一部ではエビと誤解されているようだ。
http://www.interq.or.jp/cgi/tvc-15.com/spinn/bootvtr/dokuhon_bootvtr.html
えーと。
みなさま、
エビというガセ情報流してごめんなさい・・・・・
その後、結局2007年に25周年記念として5枚組DVDにワークプリントと未公開シーンが収録され、
格段に鮮明な画像から エビではなく魚 だったことが判明したわけです。
この魚を昔、エルフィンナイツプロジェクトの高木さんと二人で、
なんの魚だろうと、あーでもないこーでもないとさんざんアタマを悩ませましたが、
結局これは、という結論にたどりつけずに不完全燃焼で終わってました。
ちなみに高木さんはそのとき、あのでっか丼の原型をてがけられました。 (過去記事は→ こちら
)
それから私の中では 時々思い出したように
「アノ魚の正体は・・・・」
というアンバイでずっとくすぶっておりましたが、
先日、興味深いサイトにめぐり合いました。
http://www.kolisinn.net/market/fish.html
この、楽しい架空のレストランを運営されておられるのはコリスケさんという日本人の方ですが、
アメリカで売られている魚の事情に精通しておられ、
その種類をくわしく紹介してあり、また料理にもくわしく、
まさにこの魚丼のことを相談するのに最適な人物であろうことは容易に想像できました。
無礼を承知で早速メールで協力を依頼。
ありがたいことに快諾いただき、キャプチャー画像を送って見て頂きました。
そして・・・いただいたレポートは新たな視点からの斬新なものでした!
以下、コリスケさんからメールで頂いたレポート
を一部編集させていただいたものです。
さて魚ですが、結論から言うとこれは作り物(もしくは本物の魚を加工したもの)じゃないかと思います。
そして、に~ぜきさんもメールで指摘されていましたが、2つの丼は別のものですね。
以下、色補正した画像を三枚貼付けます。
画像1 ↓(ワークプリントより)
画像2 ↓ (未公開映像集より)
画像3 ↓ (未公開映像集より)
魚の色がはっきりと違います。
ライトのあたり具合で暗くなっているのかとも思いましたが、
もしそうだったら魚の頭の平たい部分がここまで白く光ることは無いですよね。
(1)に~ぜきさんもメールで指摘されていましたが、アーチ型の背びれが完全に消えています。
(2)(3)逆に花形に切った人参が増えています。もし菜っ葉の影に隠れているとしても
(2)か(3)のどちらかの場所には一部でも人参が見えているはずです。
後から茶色く彩色したんじゃないでしょうか。
もし画像2、画像3の魚を本当に調理をしたとしたら身が縮んだり曲がったりして、
画像1のように同じ大きさ、同じ形になるはずないです。
またもし画像2、画像3の時点でこの魚が調理されていたとしたら
写真のように背びれがピンッと立っているのもおかしいです。
唐揚げにすれば背びれを立たせたままに仕上げることも出来そうですが
画像2、画像3の写真に揚げた魚の質感はありません。
ということで、この魚はあとで色付けされた小道具の作り物だと思います。
ただ作り物だとしてもモデルになった魚はあるわけですよね。
きっぱり「これはこの魚だ!」と言い切れるものは思いつかないのですが、
背びれのアーチ型と肌の色合いはWHITE PERCHに似ています。
http://4.bp.blogspot.com/-Tm3gEqFFilg/TqKD89NyWKI/AAAAAAAABUM/Z2FJyVs6494/s1600/120+Things+in+20+years+-+Aquaponics+-+Silver+perch+in+a+frying+pan.jpg
ただ、このサイズのホワイトパーチだともっと鱗がハッキリ見えるはずです。
http://www.ihavenet.com/images/Smoked-Trout-and-Apple-Salad-Recipe.jpg
見た目はかなり違うのですが、
このサイズで画像1みたいに乾いた感じの質感をもった魚でアメリカのスーパで
アメリカでは日本みたいに丸のままの魚ってなかなか売っていないのですが、
でも上記の三種類はスーパーの鮮魚部でも比較的手に入れやすい丸のままの魚です。
このへんをモデルにしたのではないでしょうか?
と、ここまでが昨日思いついた推理なのですが...
ただこれは、↑の魚がアメリカの魚屋で売られている魚だと限定した場合の話です。
カリフォルニア沿岸で釣られた食用以外の魚の一種の可能性もあるんですよね。
そうだったら、もーお手上げです(笑)
レポートはこんなところです。
ぼんやりモヤモヤした答えで恐縮ですが、私は数日間とても面白かったです。
また何か楽しいことがありましたら誘ってください!
どうもありがとうございました。
メールをお送りしてからも、いろいろと考えていたのですが、
やっぱり本物の魚じゃない気がするんですよね。
丼や花形人参(アメリカの人参は細くて小さいのです)のサイズから
推測すると魚の全長は16cm前後だと思うのです。
そのサイズでこの形の魚っていないんですよね。
ティラピアとブルーギルは顔が全然違います。
両方ともおちょぼ口ですなんですが、
写真の魚はタラやハタみたいに下唇が出ています。
体の形も写真の魚は円筒状ですよね。
ティラピアとブルーギルは、どちらかというと鯛みたいに平型です。
あと鱗の感じも違いますね。
もっと鱗がはっきり見えるはずです。
大きさを無視して考えるのなら、私が一番似ていると思う魚は
BLACK ROCKFISH(メバルの一種)です。
あ、でもモデルだから大きさなんか気にしなくても良いんですよね!
それでは。
いかがです?
新たな視点ですね。
魚は作り物ではないか、というのは。
確かに撮影にあたっては撮り直しの異常に多いスコット監督のことを思えば、
実際の魚を調理したものよりはニセモノを小道具として用意したほうが、
撮影がおしても腐敗しないし、あらかじめ思ったビジュアルに用意できるし。
理にかなってますね。
私もなんとなく心の奥底に引っかかっていたのは画像2、3の魚の顔が
とてもよく似ているという点。普通はもっと個体差ってあるでしょうに。
実は作り物で、同じ型から抜かれたと考えると、辻褄が合う。
想像をたくましくすれば、
核戦争で地球環境が破壊され、動物も絶滅した世界観にあわせ、
食用魚も人造(つまり個体差がない)という設定を表現したかった?
そういう監督の指示?
しかし、撮影し編集した映像を監督がお気に召さなかったのであえなく削除されたのかも。
コリスケさん、豊富な知識に裏付けられた、
斬新な洞察をありがとうございました!!!!