家電リサイクル法(背景や目的など)【株式会社船井総合研究所:廃棄物ビジネスコンサルタントコラム】東新一
家電リサイクル法(背景や目的など)
前回から『資源有効利用促進法』の流れをくむ、個別物品の特性に応じた規制の背景や目的をご紹介しています。今回は、家電リサイクル法です。正式名称は『特定家庭用機器再商品化法』です。前回ご紹介しました1995年に制定された容器包装リサイクル法の後、1998年に制定されました。また、その他の法令は家電リサイクル法の後に制定されました(建設リサイクル法:2000年制定・食品リサイクル法:2000年制定・自動車リサイクル法:2002年制定・小型家電リサイクル法:2013年制定)
<家電リサイクル法>
家電リサイクル法の対象品目は4種類になります。
1.エアコン・室外機
2.テレビ(ブラウン管、プラズマ、液晶)
3.冷蔵庫・冷凍庫
4.洗濯機・衣類乾燥機
これらは家庭用として製造・販売された製品で同法の対象となります。また、事業所で使用され、その後、廃棄される場合でも家庭用機器であれば法律の対象になりますが、業務用製品は対象外になります。なお、上記の4つの家電は特定4品目と呼ばれています。
続いて、家電リサイクル法が制定された背景をご紹介します。それは、ご存知のように家庭から排出される粗大ごみは基本的に市町村が収集し、処理を行っています。しかし、その中には、非常に大型で重たいため他の廃棄物と一緒に収集することが困難であったり、非常に固い部品が含まれているため各市町にある粗大ごみ処理施設での破砕が困難であるものが存在します。特定4品目は、これに該当し、また、金属、ガラスなどの有用な資源が多く含まれるものの、市町村による処理・リサイクルが困難で大部分が埋め立てられている状況にありました。
つまり、家電製品のリサイクルをしっかりと実施することは、廃棄物の減量、資源の有効利用に大きく貢献するものであった訳です。このため、リサイクルの体制整備、製造業者、小売業者を含む関係者の役割分担、技術、将来展望など様々な観点から検討が行われ、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が制定されたということです。よって、特定4品目は、法施行前は自治体(市町村)で粗大ごみとして回収・処理がされていましたが、施行後は自治体で回収しなくなりました。
よって、家電リサイクル法の目的は第一条に記載されていますが、以下のとおりです。
・第一条 この法律は、特定家庭用機器の小売業者及び製造業者等による特定家庭用機器廃棄物の収集及び運搬並びに再商品化等に関し、これを適正かつ円滑に実施するための措置を講ずることにより、廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
続いて、家電リサイクル率の目標ですが、「回収率」と「再商品化率」という目標が設定されています。「回収率」とは、特定4品目の出荷台数を分母に、適正に回収・リサイクルされた台数(製造業者等による再商品化台数を含む) を分子とした回収率になり、「再商品化率」とは、特定4品目毎に設定され、それぞれがリサイクル処理によって鉄、銅、アルミニウム、ガラス、プラスチック等が有価物として回収された値を法定基準として定められています。なお、それぞれの法定基準と実績値(令和4年)は以下のとおりです。
・エアコン(法定基準80%→再商品化率93%)
・ブラウン管式テレビ(法定基準55%→再商品化率72%)
・液晶/プラズマ式テレビ(法定基準74%→再商品化率86%)
・電気冷蔵庫/電気冷凍庫(法定基準70%→再商品化率80%)
・電気洗濯機/衣類乾燥機(法定基準82%→再商品化率92%)
続いて、リサイクル料金ですが、特定4品目毎に一律ではなく製造メーカーによって異なっています。
また、リサイクルの流れですが、まず、特定4品目を廃棄をする人は、リサイクル料金を負担し、
・購入店(中古品の小売業者を含む)若しくは、買替店に、引き取ってもらう
・リサイクル券を貼り付け、各都道府県で1〜数箇所ある集積場所(指定引取場所)に持込む
・地域によっては自治体や家電量販店/電器店、一般廃棄物収集運搬業に引き取ってもらう
になります。その後各社のリサイクル工場に運搬され、本体の破砕などによりケーブルひとつまで細かく分別/加工され、金属やプラスチックなど再利用が可能なものは家電の製造工場に運搬され、再び材料として使用されます(再商品化率)。ここでは再利用が不可能なものが廃棄されます。
最後に、家電リサイクル法の問題点と見直し及び今後をご紹介します。まず問題点ですが、パソコンや自動車は、新品の販売価格にリサイクル料金が上乗せされて販売されていますが、特定4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)は廃棄時にリサイクル券を購入する後払い方式になっているため、不法投棄を誘発しています。また、「見えないフロー」と呼ばれる問題(例えば、軽トラック等で“廃家電の無料回収”する業者にて回収、輸出、そして、修理された後再び販売されたり、分解し金属買取業者に販売されたりし、家電リサイクル法のリサイクルルートにのらない方法で処理されるケース)もあります。また、自治体の収集運搬の免許がない業者(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に違反)によって、リサイクル料を徴収した上で夜中に人目の付かない所へ不法投棄をしたり、上記の業者へ渡したりすることもあるようで、その対策として市町などによる注意告知啓蒙活動などが実施されています。
以上、如何でしたか?私の家に無許可業者によるチラシ(無料回収)が入っていることがあります。本来リサイクル費用がかかる家電品が無料になるということで、おもわず声をかけたくなる気持ちもわかりますが、実際は法外な料金を請求されトラブルになった例や法令違反者の加担者、不法投棄にもつながりますので、そのような業者には依頼しないことが大切ですね!
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