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在日朝鮮人の「国籍」について | 泰然自若@ソウル

泰然自若@ソウル

このblogでは在日朝鮮人3世のktaesikが、日々思った事・感じた事を気楽に書いてます。タイトルはそうありたいとの気持ちの現れです。※本ブログ内の文章・写真の無断転載はお断りします。http://twitter.com/3lapstogo

 この話を先にしておかないと色々説明が面倒だと思いつつも、説明するのが面倒で書いてませんでした。けど「朝鮮」籍を=「朝鮮民主主義人民共和国」の国籍と勘違いしている人も多いし、未だにメディアで「北朝鮮籍」なる摩訶不思議な表現もたまに目にするので、少々説明をしておこうと思います。ちょっと長いけど根気強く付き合ってください。

 日本による植民地時代、朝鮮人は日本国籍を有していました。そして日本の敗戦による朝鮮の解放後も、日本にいた在日朝鮮人は日本国籍のままでした。しかし1947年に入り、在日朝鮮人の日本社会における処遇と関連して重要な転機が訪れました。

 天皇の最後の勅令として外国人登録令(1947年5月2日公布・施行勅令第207号)が発布されると、その第11条は「台湾人のうち法務総裁の定めるもの及び朝鮮人は、当分の間、これを外国人とみなす」と定めました。これにより旧植民地出身者は、日本国籍を有しているのに外国人と扱われ、一度日本国外に出ると「再入国」を禁止され、また外国人登録証明書の常時携帯を義務づけられるなど、日本政府にとって治安管理の対象として扱われたと言えます。

 外国人登録令の発布を受け、1947年の8月から9月にかけて全面的に実施された外国人登録において、在日朝鮮人の「国籍表示」はすべて「用語(記号)」としての「朝鮮」と表記されました。しかし1948年に南北両政府が成立すると、韓国政府及び民団(1946年10月3日結成)の強い要望のもと、第一回切り替え(期限3年)の1950年以降から、「朝鮮」から「韓国」に記載変更をする人が現れてきました。

 そして、法務府民事局長通達(1952年4月19日付民事甲第438号「平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」)により、1952年4月28日午後10時30分、サンフランシスコ平和条約の発効とともに旧植民地出身者の日本国籍は一方的に失われる事となりました。この事実は、今日の在日朝鮮人の国籍問題を考える上でも重要であると思います。

 話をここで一旦整理すると、①在日朝鮮人は日本国籍を有したまま「朝鮮」という「記号」で「外国人登録」をされた②大韓民国樹立後、「韓国」籍に変える者もいた③サンフランシスコ講和条約の発効とともにその恣意的な解釈により在日朝鮮人の日本国籍は一方的に奪われた、という流れになります。

 つまり日本において法的に「朝鮮」籍と朝鮮民主主義人民共和国の間には、直接的になんら関係がありません。しかし「韓国」籍所有者はちょっと違います。

 1965年6月に日韓基本条約が締結されると、同時に「在日韓国人」の法的地位協定が締結され、正規の国籍となった「韓国」籍の所有者には「協定永住権」申請の資格が与えられました。「用語」における「朝鮮」籍保有者との処遇における大きな格差が生じ、そのため多くの者が「韓国」籍に切り替える事になったのです。永住権等を巡っては、今は「朝鮮」籍所有者にも「特別永住」の資格が与えられるようにはなりましたが、「朝鮮」籍はいまだ国籍では無く、「用語/記号」としての意味しか持っていないと言えます。

 ただこの「韓国」籍も、即ち「大韓民国」国籍かと言われれば留保が必要です。例えば川崎フロンターレに所属し、W杯予選でも朝鮮民主主義人民共和国の代表として活躍している鄭大世は「韓国」籍です。僕の「韓国」籍の後輩は、大韓民国のパスポートを所有していますが、朝鮮民主主義人民共和国のパスポートも所有できます。これは国際法上重要となってくる南北両政府の在外同胞に関する法律と関係しているはずです(すいません、もうちょっと調べてみます)。

 一方「朝鮮」籍の自分は、「韓国」籍に変更し大韓民国に在外国民登録をしなければ大韓民国のパスポートを所有できません。「朝鮮」籍は国籍ではないので、海外に行く時は日本政府が発行する再入国許可証を持って、韓国に行く時は俗に「臨パス」と言われる「旅行証明書」をその都度発効してもらって行きます。その手続きも、福岡の韓国領事館は比較的良心的と言われていますが、韓国への渡航理由書と向こうでの日程表などの提出を求められます。「ご相談」という名の面接もあり、以前は相当いやらしい思想点検が行われていたそうです(直接聞いたのは大阪や東京の話ですが)。この度自分も留学関係で、「ご相談」の為に呼び出されるかも知れないそうです。

 この在日朝鮮人の国籍について講演会などで同時に話させていただく事は、自分の預かり知らぬ所で自分の国籍が変わるという事です。日本の外国人登録証明書には「国籍など」として朝鮮、再入国許可書には「Nationality(国籍)」が「朝鮮」とされていますが、アメリカのVISAには「PRK」、つまり朝鮮民主主義人民共和国になっています。そして韓国の旅行証明書ですが、これがまた時期によって違って、ただ「KOREA」もあれば「REP.OF KOREA」つまり大韓民国になってるのもあります。在日朝鮮人にとって国籍は自分で決められないものなんですね。

 このように自分で書いてても複雑で、また勉強し直してもっとわかりやすく書かなければならないのですが、最後に自分がいくつか懸念している事を書かせてください。

 民主党が永住外国人への地方参政権を付与しようと言う法案を作っているみたいですが、岡田かつやのブログを見る限り、「北朝鮮の方」は国交もないし望んでもいないから排除するそうです。ここで言う「北朝鮮の方」はおそらく「朝鮮」籍の在日朝鮮人を指していると思いますが、「朝鮮」籍=朝鮮民主主義人民共和国なのでしょうか?(民主党の提言もありました。)

 確かに在日本朝鮮人総連合会は、朝鮮民主主義人民共和国の海外公民団体を自認していますが、総連には「韓国」籍も「日本」籍もいるし、総連と関わる人には様々な想いのグラデーションもあります(民団と「二股」をかけてる人も多数います)。それに「朝鮮」籍在日朝鮮人の中には、朝鮮民主主義人民共和国を積極的に支持する理由から「朝鮮」籍を保持し続けている人も入れば、そこに「一つの朝鮮」、統一への想いを込めている人もいるし、日韓条約に反対する立場から韓国籍を選択しない人もいます。このような多様な在日朝鮮人の想いを、乱暴に分類する事には大反対です

 一部では日朝国交正常化が行われると、「朝鮮」籍は朝鮮民主主義人民共和国の国籍へと自動的に移行するという話もあります。上記の理由からも自分は反対です。こういう事ばっかり言ってると、中にはこういう人もいます。「結局お前は北なのか南なのか、それとも日本国籍を取るのか」。僕はそのような問いの枠組み自体を突き返して行く事が大事だと思います。

 最後に日本国籍を取得した在日朝鮮人について、自分の不勉強もありあまり書く事が出来ませんでした。「帰化」と言う表現の意味も含めて、改めて書こうと思います。ダブルの子供の国籍についても書けたら書きます。また所々説明不足や自信が無い点もあるので、間違いや知ってる情報があれば是非コメント欄に寄せてください。共に学べればと思うので、よろしくお願いします。
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