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ボロになっても着たい理由を知りたい | 洋服直し屋の日常

洋服直し屋の日常

服の直しや仕立ての仕事をしています。
日常で出会ったおもしろいこと、服の製図や
自分でできる修理方法など書いています。

                ボロになっても着たい理由を知りたい



「袖がボロになったので、カットして半袖にしてください」
と依頼を受けた。
これはボロになったというより「廃棄」だと思うんだけど、

ご本人は「廃棄」という概念がない。   

 

 

 

 


このかたが私に修理を依頼される作業服は、全部こんな状態。
仕事は溶接関係のようだ。

この服を着て、よく今まで無事に仕事してこられたなぁ!
袖口がコードにひっかかったり、溶接の火花も飛ぶだろうに。
「洗濯もお願いします。洗濯機がないんです」と言われた。

「コインランドリーがお近くにないんですか?」
「ありますが、メンドーで」


「油汚れがありますので、
アイロンマットに油がしみ込むと、次に依頼を受けたお客様の服に
油がつくとえらいこっちゃになります。
水では油よごれは落ちません。

お湯で2度洗いしなきゃなりません。

洗濯代をいただくことになりますが、
200円いただいてもいいですか?」

「クリーニング屋には断られました。洗うともっと破れるそうです」

「トーゼンですよ。 新しい作業服を買われたほうがよろしいかと」
 新品を買って、気持ちよく思いのまま働こうという意識もない。

               ♬ ボロは着てても心は錦 ♬

という歌があったが、ご本人がボロの作業服が着心地よければそれでよし。
でも1か月後には他の場所が破れるはずだ。

生地の繊維が薄く弱くなっているからだ。
生地を左右にひっぱると、ティッシュペーパーのように
簡単に破れる。

失礼ながら、少し知的障害もありそうだ。
性格はおだやかで、素直。
ただ、新しく丈夫な作業服を買うための(2,000円前後)を支払うのに
抵抗があるようだ。
修理代のほうが、新品を買うより高くついても修理を選ばれる。

こういう心理状態をなんていうのだろう?
ケチとはちがうなあ。

新品を買うという行為に、トラウマでもあるのなら
一度訊いてみたい。


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