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キロル | Cherio's Days

キロル

仕事中にキロルのことを知って、
泣くのを我慢しなきゃって、
目にぎゅっと力を入れて目を閉じると、
瞼の裏に浮かぶのは、
ララに見守られながらあの半円の放飼場を、
イコロと元気に走り回るキロルの姿。


重苦しい胸の鈍い痛みを抱えながら、
職場を出て、クマ友さん達とLINEして、
皆さんのXを読んでも、
心の何処かで、
これは夢なんじゃないかと思っていた。

夫が帰宅して「キロルが…」と伝えた途端に、
涙が一気に溢れ出てきて、もう止まらなくなってしまった。
キロルの為に、
キロルの悲しい気持ち切り替えるために、
住環境を変えて、
円山動物園に返して貰いたいとずっと思っていたけど、
私はしっかり声を上げなかった。
ただ言いっぱなしだった。
もっと大きな声で言えばよかった。
もっと何かできた…大好きなあの子の為に。
でも、できなかった。
ララとの約束も守れなかった。
身体の事情、様々な事情で最近は会いにも行けてなかった。
ごめんね、キロル。
大好きなキロル。

私が双子のホッキョクグマのイコロとキロル、
そしてお母さんのララをみて、
一目で恋に堕ちてしまったのは
2009年の春だったな。
まだ雪がほんの少し残るあの半円の放飼場で、
西に沈む夕陽に照らされながら、
イコロとキロルは、ララなら優しく抱かれていた。

優しくて、お母さん思いだったキロル。
あの愛おしい子は、
私たちが愛してやまない、
あの愛おしいホッキョクグマは、
もういないのだ
何処に行ったって、
もうあの子には会えないんだ

これから先も、
まだまだ、あの子には未来があると思っていた。
あの偉大な父デナリと、母ララの命を受け継いで、
これからも逞しく、より美しく、
生きてくれる彼の未来を疑わなかった。

悲しみと、ショックと、後悔と、
色んな気持ちが次から次に襲ってくる。

どうしてこんなに、苦しいんだろう…

キロル、もう自由だよ
空も飛べるよ
だから札幌に、
お母さんや可愛い妹のいる
故郷の円山動物園に帰っておいで