川原繁人さんにご著書『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』をご恵贈いただきました。コロナ禍からさらにブーストがかかったように出版されていますね。まずは目次を。 はじめまして、言語学者です 朝礼:ことばはおもしろい 1時間目:濁点「゛」のなぞ 2時間目:「ぱぴぷぺぽ」にまつわるエトセトラ 3時間目:子どもの言い間違いを愛でる 昼休み:「わかった?」って聞いちゃダメ 4時間目:プリキュアに似合う音 5時間目:ポケモンの進化は名前でわかる 6時間目:原始人のしゃべり方 7時間目:世界と日本の多様なことば 放課後:まだまだ質問に答える スペシャル対談:橋爪大三郎×川原繁人 ~社会学者と言語学者が考える「学び」とは~ 出版社のページより 本書の特徴概要川原さんはこれまで音声学の啓蒙書,教科書から自身の研究テーマや言語関係の話題に関するエッセイまで広い射程
前回予告した通りChatGPTが得意とする「生成」のフィールドで話を進めよう。 AI(人工知能)が「人間の脳の役割を機械に代替させるもの」だと聞いて、「人間の代わりなどできるものか」とか「人間では到底及ばないデータの蓄積や処理が可能である」といった話になることが多いのではないだろうか。前者の立場では、人間の気持ちを機械が理解でるはずがないという考え方による意見なのだろう。 そこで、つらく悲しんでいる人にかける言葉をChatGPTにイタリア語で考えてもらうべく質問したところ、 つらく悲しんでいる人にかける言葉をいくつか挙げます。 1. "Mi dispiace molto per quello che stai passando." - 「あなたが経験していることにとても悲しく思います。」 2. "Capisco che sia molto difficile per te in quest
本連載の第2回目となる今回はヨーロッパ系の言語で避けて通ることのできない「名詞の性」について考えてみたい。 インド・ヨーロッパ語族のイタリック語派に属するラテン語から派生したイタリア語は、他のロマンス諸語と同様、文法の約束事として性を持っている。日本語にも、英語にもないこの考え方にイタリア語学習で初めて遭遇し、驚く学生は少なくない。また、知識として知ってはいても実際に名詞がどの性を有しているのかを考える(名詞の性を覚える)のを面倒くさいと感じる学生もいるだろう。 幸いなことに、イタリア語の場合には名詞の単語末の音によってある程度見分けることができる。単数形の語尾が-oで終わるものは男性名詞であることが多く、-aで終わるものは女性名詞であることが多い。では「新聞 giornale」や「鍵 chiave」はどうなるのか。-eで終わる名詞はどちらにもなり得る。giornaleは男性名詞、chia
日本の外国人受け入れ政策に関する論文を枕に Chapple, J. (2014). Japan’s Immigration Intimations and Their Neglected Language Policy Requisites. Asian and Pacific Migration Journal, 23(3), 345-360. https://doi.org/10.1177/011719681402300305 先日のオンライン読書会で、日本の外国人受け入れ政策に関する論文を読んだ。 論文の概要は省略するが、方法論的にいろいろ考えるところがある論文だったので以下にメモする。 思想史的な説明 気になったのは、本論文が、言語政策関係の特定の施策(orプログラム)を、思想史的な傍証を使って説明するというアプローチ(というかレトリック?)を随所に使っている点である。日本の外国人
言語を,それが用いられる社会との関連からとらえ研究する,言語学の一部門。言語集団内の各階層 (社会階級,年齢,性,職業など) と,それが用いる言語との関係,集団の構造 (たとえば,身分制が固定しているか,横の人間関係が多いか縦の人間関係が多いか,成員間の交渉が多いかなど) と言語との関係などが,現在までの興味の中心を占めている。このような研究の応用として,コミュニケーションの円滑化をはかる言語工学が考えられ,また,研究の成果を言語政策に応用することも考えられる。今日では,社会言語学と呼ばれることが多い。 … 【境界領域】 以上述べたものは,主として言語そのものを研究する分野であるが,言語が人間および人間社会のその他の事象と無関係に存在するものではないことから,言語とその他の事象との関係を研究する分野が必要になる。言語と心理との関係,発話行動における心理などを考える〈言語心理学〉,幼児の言語
はじめに 下記の話題に関して,「言語の研究者は(軽々しく/何があっても)ことば遣いに関する規範に口出しするのは良くない」という反応を見かけたので,関連して今の自分の考えを少し書いておこうと思いました。 togetter.com 解説や問題の整理という類のものではなく,実際の研究者がどう考えているかということの1例だと思ってください。とりあえず以下ジェンダーに関わる話はぜんぜんしていません。というか書いた後に思ったのですがとてもごちゃごちゃしているので,もっと良い議論ができる人の叩き台になれば僥倖です(叩けるほどの強度もないかも)。 言語学と規範 言語学の入門では,どれくらい詳しくやるかは差があるでしょうが,必ずと言っていいほど「言語学は規範的ではなく記述的である」というような話が出てきます。重要なポイントの1つなので,内容をかなり絞り込んで作った下記の「言語学入門入門」でも取り上げています
推理小説「九マイルは遠すぎる」における会話的推意の働き スイリ ショウセツ「キュウマイル ワ トオスギル」ニオケル カイワテキ スイイ ノ ハタラキ
好評連載の第2回です。今回は「語用論」をテーマに、人間の会話がなぜ成立するのか、子どもの間違いから探っていきます。 事例1 「筆者の説明のしかたで、「いいな」「分かりやすいな」と思ったところはありましたか。」 「ありました。」 さあこれ、マル? バツ? マルをあげる根拠としては、この質問はあくまで「ありましたか?」と訊いている以上「はい(ありました)」か「いいえ(ありませんでした)」で答えればいいから。そのとおりです。でもこれではマルはもらえなさそう……って、見た人はおそらく思っているでしょう。 「この答えじゃダメ」と判断する理由があるとすれば、これは出題者の知りたいことに答えていないからです。ここでは「いいな」「分かりやすいな」と思った箇所を挙げなさいって言われてんのに決まってるでしょ?って言いたくなりますね。 だけど設問には「あったらそれを挙げなさい」とは一切書かれてないですよね。言葉
5/28日追記:ある先生から咳のデータを見せて頂きました。論文の公開はできないとのことですが、咳における流量は発話における流量に比べて文字通り桁違いでした。また、音圧もこれまた桁違いでした。もちろん発話時の飛沫も大事ですが、咳の恐ろしさを実感する値でした。 *** やはり我慢ができなくなり、動画を撮ってUPしました。でも、書いたのはこちらの記事が先です。 *** 5月21日ごろでしょうか、『ひるおび』という番組で、以下のような仮説が紹介されたようです。日本語で「これはペンです」と言った場合と、英語でThis is a penと言った場合だと、後者の方が飛沫が飛ぶので、それが欧州やアメリカでの完成拡大に繋がっているのではないか、という話しです。 川原は実際の番組を見ておらず、しかも、前後は切り取られているので、どのような文脈だったのか詳しく存知あげていないのですが、音声・言語の専門家としてい
下記のまとめとその反応を見てちょっと気になったので。 ドイツ人の日本語の「ん」の聞こえ方は3通りある⁉ - Togetter 日本語学概論で音声・音韻の話が入っていればかなりの確率で出てくる話だと思いますし、言語学概論で音素や異音の話の時に例として触れられることも多いのではないでしょうか。 音声・音韻は専門ではありませんが、いくつか引用を紹介(専門の方のつっこみ待ちです)。 説明文として分かりやすいのは下記辺りでしょうか。 この文字(注:「ン」のこと)で表される音は伝統的用語では「撥音」と呼ばれるが、よく観察すると次のようにいろいろなバリエーションがあることがわかる。 さんばい [sambai] さんだい [sandai] さんかい [saŋkai] さん [saɴ] さんを [saã.o] 次に続く音と同じ調音の位置の鼻音が現れる。後ろに何も来ないときは口蓋垂音の[ɴ]、母音や接近音が続
相転移Pさんからついったーで質問をいただいて少しだけお答えしたのだけれどさすがに適当すぎるかなと思ったので補足を少しだけ。 コトの発端やその時のやりとりについては下記のエントリでまとめてくださっています。重要な論点は出ているかなと思いますので、あまり付け加えることもないのですが。 【英語の方が語彙は豊富】という見解が全く理解できなかったので dlit さんと Mitchara さんに質問してみた記録 | 相転移プロダクション ちなみに、私の専門は日本語なので以下ほとんど日本語の話です。誰か英語についても書いてくれないかなー 「語彙」の定義 さて、具体的な話に入る前に言語研究(日本語学)での「語彙」の定義について書いておきます。 「語彙」の定義:「語」の集合 ホントに基本これだけです。以下引用。 日本語学など言語に関する専門研究では、一般に、語彙とは語の集合であると規定される。すなわち、一定
6 第 回 このコーナーでは、これから研究を目指す海外の日本 語の先生方のために、日本語学・日本語教育の研究に ついて情報をおとどけしています。今回のテーマはポ ライトネス理論と対人コミュニケーション研究です。 1. 円滑な対人コミュニケーションに 必要な言葉遣いとは? 対人コミュニケーション上重要な言葉遣いと聞いて、 日本人が真っ先に思い浮かべるのは、「敬語」の使い方 ではないでしょうか。しかし、日本語を学ぶ若者が、日 本の若者に溶け込みたいと願って、最初にぶちあたるの は、「いかに敬語を使わないか」という問題だとも言わ れています。留学生が友達と話をする際に、日本語の教 科書で習った敬語をせっかく一生懸命使ってみたのに、 「そんな言葉、友達同士では使わないよ」と言われて ショックだったとか、自分の話し方が、仰々しい、よそ よそしいという印象を与えてしまい、友達と、もう一
ポライトネス(Politeness)とは、会話の参加者がお互いのフェイス(自己決定・他者評価の欲求)を侵さないために行う言語的配慮のことである。Brown & Levinson (1987 [1978] 以下 B&L) によって確立された。 彼らのポライトネス理論とは、“polite”という一般用語とは異なり、「円滑な人間関係を確立・維持するための言語行動」(宇佐美2002)と定義される、語用論の枠組みの中での概念である。 ポライトネスを従来の言語形式の丁寧度の問題ではなく語用論的なものと捉える発端となったのは、フランス語における二人称代名詞 tuとvousの使い分けを人間関係や社会的要因との関連から考察したBrown and Gilman(1960)である。その後、Lakoff(1973)、Leech(1983)などは会話の原則という形でポライトネスを語用論的に捉えている。 Goffma
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