★大人にはわからない日本文学史/高橋源一郎 asin:4000271016 近代日本文学を特徴づけてきたのは「自然主義的リアリズム」や「私」という表現形式だった。しかし、現在書かれているいくつかの日本の小説には、そうした表現形式の失効が明らかに感じとれる。――こうした主旨のことを、高橋源一郎は具体的な作品から読み解いていく。そして、その変化がもたらされた背景や経緯、さらには、その変化が私たちの歴史や言葉全体という大きな観点からみていかに重大な意味をもつのかを、考察していく。 現在の小説としてはいくつかの作品が引用され、それぞれ従来の表現形式からどう隔たっているのかが慎重に分析される。いずれもなるほどと目を開かされるが、なかでも特に説得力があったのは、ニートやワーキングプア風の人物が登場する岡田利規や前田司郎の小説を、100年昔のワープア記ともいうべき石川啄木『ローマ字日記』と比較した考察だ