高級車と言えば木である。「木なのは薄皮1枚だけ,中身は樹脂さ」と分かってはいるのだが,好んでだまされに行ってしまうこの感じ。持って生まれた感覚なのだろう。 馬車大工が作っていた頃と違い,クルマでの木の使い方は限られている。薄皮1枚,しかもほとんど平らな薄皮だ。“木を曲げる”という不確かな工程は,工業製品にはなじまない。「コルベットの床」など例外はあるのだが,強度部材として使うこともめったにない。 ▼圧縮してから,曲げる こんな木の使い方がもっと自由になるかも知れない。もっと豪快に曲がったところに使える。強度部材としても使える。木を曲げる技術が進歩するからだ。 岐阜大学が木を自由に曲げる研究に乗り出した。「曲げわっぱ」をはじめ,2次元に曲げる方法は古くからあった。これを3次元に曲げてしまおうという。 木をあらかじめ120℃で軟化させ,繊維と直角な方向に圧縮しておく(図1)。こうすると水分や抽