取材を終えて帰り支度をしていたら、取材相手に「かくしごと、ないですか?」と聞かれた。隠し事はないことはないが、初対面のあなたに言う必要はない。なんで、そんなことを聞くのか。相手はゲイの男性。ゲイは繊細だというから、何か特別な感覚で察したのか。そうだとしたら気味が悪い。なんてことが瞬時に頭を巡ったが、実は「書く仕事」だった。 漫才は聞き間違えたフリしてボケる。「うちのサイがね」「君とこ、サイがおるんか」「違うがな。女房、奥方、山の神」という、いとし・こいしの漫才みたいに。笑い話で済めばいいが、「悪夢や」とボヤく相手に、「アコム?」と聞き返して不興を買ったこともある。かと思えば、わざとボケて無視されることもある。聞き間違いはフリも含めて難しい。【松井宏員】