宇佐美文理『中国絵画入門』(岩波新書)がとても有益な読書だった。中国の水墨画はどこかで何かしら見知っているような気がして、でもきちんと見た事がなかったし、その勉強も全くしていないので、改めて考えてみるとカオスというのが印象だった。それが本書で少し整理されてきて、小さな本を1冊読んだだけでこんなに印象が変わったかと驚いた。タイトルどおりの優れた入門書だ。 新聞の書評も、張競(毎日新聞)と松山巌(読売新聞)が取り上げて(どちらも8月3日)、いずれも大変好評だ。ここでは松山巌の一部を紹介する。 中国絵画は古くから日本画に大きな影響を及ぼした。にもかかわらず私たちは中国絵画を鑑賞する際、西洋絵画と同じく構図や立体感、主題や技法で、つまり形で捉えようとする。むろん中国でも形は大切だが、それ以上に重要な要素は〈気〉であった。 では気とはなにか。気は目に見えるものではないが、中国人には常識の概念で、森羅