どなたのご明察だったか、日本人というのは国際競争のなかで自信を喪失すると、きまって日本語を貶(おとし)める民族であるらしい。維新前後のころしかり、先の敗戦後またしかり。欧米の先進的な科学技術を目の当たりにした日本人は、習熟に時間のかかる漢字を廃止し、国語表記をローマ字などの表音文字にせよと主張した。志賀直哉のようにフランス語を国語にせよと言いだす者までいた。 ◆英語公用語化の流れ そして今また、激しい経済戦争にあえぐわが国で、国語を軽視する動きが目立っている。大手の通販会社や衣料会社が相次いで、英語を社内の公用語にすると発表したのである。ともに平成24年に実施する方針という。 国内の会社でありながら、なぜ日本人同士が英語で話し合わねばならないのか。世界企業としてよく知られるホンダの伊東孝紳社長は「ばかな話だ。英語が必要なやりとりは英語でやる。時と場合によって使い分ければいい」と一蹴(いっし