論理的思考とは何か (岩波新書) 作者:渡邉 雅子 岩波書店 Amazon 海外留学を経験した日本人からよく聞かれる述懐として、「向こうに行って初めて、自分がいかに文章を書けないかを知った」というものがあるように思う。英語圏では当たり前に訓練されているロジカルなライティングスキルが、日本では教えられておらず、留学先で苦労して身につけた……といった語りである。こうしたエピソードを聞くと、日本の教育が未熟なのだろうか、あるいは日本語という言語に限界があるのだろうかと、少し悲しい気持ちになったりもする。 本書もまた、そうした述懐から始まる。著者がアメリカ留学時に提出したエッセイは、はじめは全く評価されなかった。しかし次第に「アメリカ式エッセイ」の書き方を身につけたという。しかしこの著者の場合はそこで終わらず、アメリカ式の書き方こそが「論理的思考」と呼ばれるものの「世界標準」になっている状況に研究
