陰謀論は、甘い。濃厚な蜜の味がする。 私はそれをよく知っている。少年のころ、どっぷりと陰謀論に浸かっていたからだ。それは、とてもエキサイティングで、甘美な時間だった。 だが、私はある作家のおかげで、その夢から覚めた。 覚めてみると、それは「甘い夢」どころか、黒歴史としか言いようのない悪夢であった。 当時の自分を思い返すと、苦笑と冷や汗が同時に漏れだすような気まずさに襲われる。 私が目を覚まして30年以上経った今も、この世には陰謀論が渦巻いている。 「人類は進歩しないな」と思う一方、私には陰謀論がはびこる理由もよく分かる。 アレは、ホントに楽で、気持ち良いのだ。 「楽」なのは、思考停止を許してくれるからだ。 例えば優に千年単位の歴史を持ち、未だに根強い「ユダヤ人が世界を支配している」系の陰謀論。 一度、この世界観に染まってしまえば、「悪いことは全部ユダヤ人のせい」と問題を直視しないで済む。ホ
