マレーシアの人口2900万人。決して大きくはないこの国が今、全世界に16億人居ると言われるイスラム教徒向けの金融「イスラム金融」の世界でリーディングポジションを築く戦略を描いている。政府と中央銀行が中心となって、したたかにこの戦略を実行している。 イスラム金融は、日本ではもちろん、世界を見渡しても一般的とは言い難い。この言葉すらご存じない読者も多いだろう。だが、知らない世界だからといって無視をするのはもったいない。なぜなら、イスラム金融の資産規模は年を追うごとに拡大し続け、2012年末には1兆6000億ドル(約160兆円)にまで膨らんだ。さらに、今後も毎年10~20%の割合で増え続けると予想されている。 イスラム金融とは何なのか。端的に言えば、ムスリム(イスラム教徒)向けの金融と取引を指す。ムスリムの生活や慣習には、コーラン(イスラム教の啓典)に記されている様々な「教え」が染み込んでいる。
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