新刊『(日本人)』のなかから、冒頭部分を掲載します。 ********************************************************************* 『(日本人)』は「かっこにっぽんじん」と読む。文字どおり、「日本人」をカッコに入れてみようという意味だ。 私たちのまわりには、「日本」と「日本人」があふれている。過剰な「日本」に溺れて、私たちは自分が何者で、世界がどんなところなのかを見失ってしまったのではないだろうか。 3.11東日本大震災と福島第一原発事故のあと、マスメディアやインターネット上でさまざまなひとたちが「日本」や「日本人」について論じた。その論旨は、おおよそ次の一行で要約できる。 日本の被災者は世界を感動させ、日本の政治は国民を絶望させた。 ここには二種類の、まったく異なる日本人がいる。 津波で肉親を失い、原発事故で故郷を奪われても絆