マキアヴェッリは、斜陽に差し掛かった都市国家フィレンツェの官僚でした。のちに名著「君主論」を書きあげましたが、それは官職から追放されたあとのことです。 あるとき、フィレンツェの大統領は、国民の好意を期待できないであろう新税法案を提出するにあたり、マキアヴェッリに理論的根拠づくりを命じます。提出された短い論文を以下で部分的に紹介します。卓越した文才と状況分析眼を持つマキアヴェッリの面目躍如といった名文です。 フィレンツェの外を見ていただきたい。そして、フィレンツェが周辺をどのような国に囲まれているかをみていただきたい。そうすれば、フィレンツェの生よりも死を望んでいる二、三の国のあることに気づかれるであろう。(略) これらの権力者たちの一人としてフィレンツェの国益を尊重してくれることは期待できないし、期待してはならない。 個人の間では、法律や契約書や協定が信義を守るに役立つ。だが、権力者の