『近頃河原の達引』 ちかごろ かわらのたてひき 世話物 四条河原の段・堀川猿廻しの段 ○ 主な登場人物 与次郎 京の都は堀川に住む猿廻し お俊 祇園の遊女で与次郎の妹 伝兵衛 お俊の愛人 ○ あらすじ 井筒屋の子息・伝兵衛は祇園の遊女お俊(しゅん)と深い仲、身請けの話もまとまっていた。ところが、お俊に横恋慕する悪侍・横淵官左衛門(よこぶち・かんざえもん)は、悪仲間と共に伝兵衛から金三百両を奪い取り、両者は四条河原で達引、つまり喧嘩沙汰となる。そして伝兵衛は思わず官左衛門を斬り、お尋ね者になってしまった。 逃亡犯の伝兵衛と接触しないよう、お俊は祇園の店から堀川の実家に預けられている。そこにはお俊の母と猿廻しで生活を支える兄の与次郎が暮らし、与次郎は決して楽でない日々の中、母に孝養を尽くしていた。 ある晩のこと、伝兵衛がそっと訪ねてくる。兄の与次郎は驚いた。何しろ相手は人殺しの逃