魚嫌いだった青年と、彼を信じ続けた妻の漁師物語 岡山の三大河川と呼ばれる吉井川と旭川に面した、岡山県玉野市の胸上むねあげ港。この漁港では春から夏にかけてハモ、クロダイ、サワラなどが収穫できる。また、冬の期間は良質なミネラルを含んだ海苔が育つことから、海苔の養殖・加工が行われている。 瀬戸内海に面したこの小さな港に、国内外のメディアで注目されている漁師の夫婦がいる。 取材に向かった場所は、胸上漁港の一画にある海苔加工所の邦美丸くにみまるだ。そこで漁業を営んでいる富永邦彦さん(37)は、漁に出かけるたびに日焼けするのだろう。肌はこんがりと焼け、Tシャツの袖から覗く腕は筋張っている。続いて、妻・美保さん(37)と次男である5歳の少年もやってきた。 2019年、2人は「漁師の過酷な労働環境を変えたい」「地元の水産資源を守りたい」と考え、消費者から注文が入った分だけの魚だけを獲り、残りの魚は海にリリ