日本支社のカフェテリアは賑わっていた。高級食材が惜しげもなく使われた豪華な料理が入り口からテーブルまでの広い通路の両側にところ狭しと並べられている。そこにTシャツとジーンズの白人のエンジニア風の男がやってきて、本日の目玉であるフォアグラのソテーには目もくれずにピザの数切れとマッシュポテトを自分の皿に載せた。男は一瞬、無表情でビュッフェを見回したが、腹を満たすにはそれで十分だと考えたのか、足早に空いたテーブルに歩いていった。 田澤はその光景を見届けると、高級エスプレッソマシンからアメリカンコーヒーを抽出して席に戻った。 「ゲストも好きなものを食べていいんですよ」 田澤がコーヒーカップをテーブルに置くと、正面に座っていた千葉みなみが悪戯っぽく笑った。 「昨晩は飲み過ぎてね。まだ牡蠣が胃に残っている」 田澤はそう返して、それが昨日飲んだ白ワインに浸かったまま浮かんでいるかのように、高級スーツに覆