10月1日、掃除のため久しぶりに福島県浪江町の自宅を訪れた菅野みずえさん。二重のマスクと線量計は欠かせない。「またここに住めるのかしら……」。掃除をしながらつぶやいた=金子淳撮影 ■防護服の男(1) 福島県浪江町の津島地区。東京電力福島第一原発から約30キロ北西の山あいにある。 原発事故から一夜明けた3月12日、原発10キロ圏内の海沿いの地域から、1万人の人たちが津島地区に逃れてきた。小中学校や公民館、寺だけでは足りず、人々は民家にも泊めてもらった。 菅野(かんの)みずえ(59)の家にも朝から次々と人がやってきて、夜には25人になった。多くが親戚や知人だったが、見知らぬ人もいた。 築180年の古民家を壊して新築した家だ。門構えが立派で、敷地は広い。20畳の大部屋もある。避難者を受け入れるにはちょうどよかった。門の中は人々の車でいっぱいになった。 「原発で何が起きたのか知らないが、ここまで来