・幻燈を見に行きませう あの古い傳統の繪は氣高いね 靜止の駝鳥勲章の輝かしさ ・馬に乗つてオリムピツクへ行く 僕の背なかでパラソルが廻つてゐる 廻つてゐるね ・雲のマントを脱ぎ裸の無花果はうぶ毛の芽をひらいた 早くお入りなさい ・春の無花果はけだもののやうな手をひらいた 明るいね 柔な枝が私の肩で息づいてゐる ・スレエト屋根に感情のこまかいゼラニウムが咲いた ここを見上げてゆく人はみな幸福さうだ ・殿下たちの馬 雲は春へと旗をたてた 四月や茴香草(ういきやう)のにほひがする ・花のある機上 縞の日に越えてきたが 街も河もみんな傾いて撮れた ・林檎の花にかくれたシルクハツト むかし僕を辱めたコタンの紅顔にこたへる ・葵家族の肩に雲が下りる腊葉(おしば)のにほひに良夜の蔭に滿ちた ・薔薇の銃眼をのぞく 轣轆とちかづく車には細い鼻の・・・・・・類が花ざかりだ ・胸をふくらませた帆船(はんせん)の