「――Anfang(セット)」 私の中にある、形の無いスイッチをオンにする。 かりと、と体の中身が入れ替わるような感覚。 通常の神経が反転して、魔力を伝わらせる回路へと切り替わる。 これより、遠坂凛は人ではなく。ただ、一つの神秘を為し得るためだけの部品となる。 ……指先から溶けて行く。 否、指先から満たされていく。 取り込むマナがあまりにも濃密だから、もとからあった肉体の感覚が塗りつぶされていく。 だから、満たされると言うことは、同時に破却するということだ。 「――――――――」 全身にいきわたる力は、大気に含まれる純然たる魔力。 これを回路となった自身に取り込み、違う魔力へと変換する。 魔術師の体は回路に過ぎない。 幽体と物質を繋げる為の回路。その結果、成し得た様々な神秘を、我々は魔術と呼ぶ。 ……体が熱い。 額に角が生えるような錯覚。 背に羽が生えるような錯覚。 手に鱗が生えるような錯