今年も夏がやってきた。3年連続3冠(高校総体/インターハイ、国体、全国高校選抜/ウィンターカップ)を成し遂げた能代工業高校を率いた田臥勇太は、この季節が来ると思い出す。「あの夏、もうコテンパンにやられましたね」。無敗を誇った『必勝不敗』の軍団が連戦連敗を喫した、あの夏の、夜の憂鬱(ゆううつ)がよみがえる――。 秋田県北部、海沿いの町――能代。能代工業バスケ部に入部直後、神奈川県横浜市からからやって来た、まだ少しほほのふっくらした少年はつぶやいた。 「高校の練習って、こんなに厳しいのか」 繰り返されるフットワーク練習、いつ終わるやも知れぬシャトルラン。 「どんなにキツくてもやるしかない。この練習を代々、先輩たちもやってきたんだ」 もちろん当時の田臥勇太は、その練習の先に、史上初となる3年連続高校3冠を獲得することも、自身が日本人初にして唯一のNBAプレーヤーになることも知る由(よし