(2010年10月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 日産自動車が6月にバンコク近郊の自動車工場で式典を開いた時、それはタイの輸出産業にとって画期的な出来事となった。日本企業が自国市場に逆輸出する日本車を国外で生産する初めてのケースになるからだ。 タイで小型車「マーチ」を生産するという日産の決定は、次第に大きくなる潮流の一端だ。日本メーカーはタイのことを、東南アジアの5億5000万人の人々に製品を供給する前線基地としてだけでなく、日本のほか、中国やインドといった巨大な成長市場向けに製品を生産する出発点と見なすようになっているのだ。 円高が対タイ投資を後押し 円はドルに対して15年ぶりの高値をつけている。円高はかつてならタイへの追加投資につながった現象だ。もっとも、世界的な景気低迷の最中はそうならなかった。 「歴史的には、日本の投資と円の強さの間には密接な相関関係があった。最近はそれが