ワシとカカア 惚れ合って一緒になった嫁であったが、年月が経つにつれ、人間は変わるものだ。いい方に変わることに超したことはないが、悪い方に変わったら、夫婦関係なんて目も当てられない。 ワシの嫁はもう嫁なんてものじゃなく、単なる性悪なカカアと成り果てた、とワシは思っている。結婚して三十年と少し、子供がないことも原因の一つかもしれないが、ワシのカカアはとにかく、口を開けば人の悪口ばかり言っている。その悪口には当然ワシのことも含まれており、他人の悪口のネタが尽きると、ワシのことをことさら悪く言う。 「ああ、何でこんなロクデナシと結婚しちまったんだろう。稼ぎはない。要領は悪い。会社でもらう仕事も半端なものばかり。これじゃ出世は夢の夢だわね。あら、また煙草の灰を畳みに落とす。誰が掃除してると思ってるんだい!」ワシは黙っている。長年の経験から、いくら正論を説いても、いくら謝っても、このカカアは口だけは達