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  • 履歴書 3(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 3 ヴェスト・ディピアにいたのはほんの一時期だったし、あまりいいこともなかった。 アパートメントの三階から追いだされたのは、六歳の兄が屋上をうろついているのを隣人が見つけて、警察に通報したからだった。 そのとき、母がどこにいたかは知らない。 その週のベビーシッターがどこにいたかも知らない。 とにかく、私は素足でバスルームのヒーターの上に乗っかって、なりゆきをみまもっていた。 兄が無事にバスルームまで戻ってこられるかはわからなかった。 もしかしたら、屋根から転げ落ちるかもしれないと思っていた。 結局、兄は無事に戻ってきた。 いまは五十五歳で、ニューハンプシャーに住んでいる。 参照 キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2 King, Stephen "On Writing" 2012/10

    履歴書 3(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 履歴書 2(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 2 それから一年ほどあと、母と私たち兄弟はウィスコンシン州のウェスト・ディピアにいた。 理由はわからない。 もうひとりの伯母のキャロライン(第二次大戦中、陸軍婦人補助部隊の美人コンテストで優勝したことがある)がビール好きの陽気な夫とウィスコンシンで暮らしていたから、その近くに住むことにしたのかもしれない。 いずれにせよ、伯父や伯母だけでなく、その家族のこともまったく覚えていない。 母は働いていたが、どういう仕事だったかは記憶にない。 一時期パン屋で働いていたこともあったが、それはこの少しあとに伯母のロイストとその夫フレッドが住むコネティカットに越してからだったように思う。 フレッドはビールを飲まず、性格も陽気なほうではなかった。 クルーカットの中年男で、幌をかけたままのコンヴァーティーブルを運転するのを自慢にしていた。 ウィスコンシン時代は、

    履歴書 2(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 履歴書 2(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 あるとき、ユーラ・ビューラは誰かと電話で笑いながら話をしていた。 手招きをしているので、そこへ行くと、私を抱き締め、くすぐって笑わせ、それからいきなり私の頭を張り飛ばした。 私が床の上に倒れると、今度は素足でくすぐりまわし、結局はふたりでげらげら笑いだした。 ユーラ/ビューラはよくオナラをした。 音は大きくて、臭いもすごい。 私をよくソファーに押し倒しては、大きな尻をウールのスカートごしに顔の前に突き出し、一発ぶちかますと、いかにも愉快そうに”ドッカーン!”と叫んだ。 私はメタンガスに直撃され、目の前が真っ暗になり、息が詰まりそうになった。 それでも結局は笑っていた。 ひどい目にあっているのに、なぜかおかしくてならないのだ。 いろいろな意味で、ユーラ/ビューラは私に抵抗力をつけてくれた。 体重二百ポンドのベビーシッターの屁を顔にぶちかまされて

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  • 履歴書 2(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 ウィスコンシン時代は、ベビーシッターが何度も変わった。 私たち兄弟が手におえない厄介者だったせいかもしれない。 あるいは、もっと実入りのいい仕事がすぐに見つかったのかもしれないし、母の要求するものが大きすぎたのかもしれない。 とにかく、次々に変わった。 私がはっきり覚えているベビーシッターは、そのうちひとりだけで、名前はたしかユーラだったとおもうが、もしかしたら、ビューラだったかもしれない、 山のように大きく、よく笑うティーンエイジの娘だった。 抜群の、だが毒のあるユーモアのセンスの持ち主で(そのことは四歳の私にもわかった)、意表をつく悪さをしては、手を叩き、尻を揺らし、頭をのけぞらせて笑っていた。 隠しカメラで、ベビーシッターが急に怒り出し、子供をひっぱたくところを撮影を見るたびに、私はいつもユーラ/ビューラを思いだす。 兄のデイヴがそのそ

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  • REALFORCE 取扱説明書 - A Librarian is logging for...

    ファンクションキー/特殊キー ファンクションキーとの押し合わせにより、以下の機能がご利用になれます。 また、特殊キーにより、音量調節やOK位置調節がご利用になれます。 キー 機能 Fn + F1 インターネットブラウザーの起動 Fn + F2 メールソフトの起動 Fn + F3 計算機の起動 Fn + F4 メディアプロダクトーの起動 Fn + F5 前のメディアに戻る Fn + F6 再生/一時停止 Fn + F7 先のメディアに進む Fn + F8 メディアの停止 Fn + F9 設定の保存 キー 機能 Fn + F10 - Fn + F11 Ctrl/CapsLock キー機能入替え Fn + F12 キーロック有効/無効 Fn + Insert LED 色の変更 Fn + Delete LED の輝度を3段階で調節 Fn + <x 消音 Fn + <l 音量小 Fn + <lll

    REALFORCE 取扱説明書 - A Librarian is logging for...
  • 履歴書 2(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 2 それから一年ほどあと、母と私たち兄弟はウィスコンシン州のウェスト・ディピアにいた。 理由はわからない。 もうひとりの伯母のキャロライン(第二次大戦中、陸軍婦人補助部隊の美人コンテストで優勝したことがある)がビール好きの陽気な夫とウィスコンシンで暮らしていたから、その近くに住むことにしたのかもしれない。 いずれにせよ、伯父や伯母だけでなく、その家族のこともまったく覚えていない。 母は働いていたが、どういう仕事だったかは記憶にない。 一時期パン屋で働いていたこともあったが、それはこの少しあとに伯母のロイストとその夫フレッドが住むコネティカットに越してからだったように思う。 フレッドはビールを飲まず、性格も陽気なほうではなかった。 クルーカットの中年男で、幌をかけたままのコンヴァーティーブルを運転するのを自慢にしていた。 参照 キング・スティヴ

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  • 履歴書 1(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 1 幼いころの最初の記憶のひとつに、想像のなかで別人になったときのことがある。 私はリングリング・サーカス団の怪力男だった。 メイン州ダラムにあるエセリン伯母とオーレン伯父の家に行っていたときのことだ。 伯母はそのことをよく覚えていて、それは私が二歳半か三歳半のときのことだったといっている。 私はガレージの隅にあったコンクリートブロックを持ちあげて、平らなセメントの床をゆっくりと歩いていた。 心のなかでは、動物(たぶん豹)の皮のチョッキを着て、センター・リングを横切っているつもりだったのだろう。 観客は固唾を呑んでみている。 私の離れ業は白くまぶしいスポットライトに照らしだされている。 観客の顔には驚きの表情がある――こんな力持ちの子供は見たことがない。 「まだ二歳だってよ」と、誰かがあきれ顔でつぶやいている。 そのときはまったく気がつかなか

    履歴書 1(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 履歴書 1(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 そのときはまったく気がつかなかったのだか、コンクリートブロックの空洞の部分にスズメバチが小さな巣をつくっていた。 巣が動かされて起こったのだろう、一匹のスズメバチが突進してきて、私の耳を刺した。 痛みはすさまじく、劇薬を注射されたみたいだった。 それまでの激痛だった。 だが、その記憶は数秒のうちに破られた。 コンクリートブロックがむきだしの足の上に落ち、五の指をぺしゃんこにしたのだ。 もうスズメバチどころではなかった。 病院に運ばれたどうかは覚えていない。 伯母もやはり覚えていない(邪悪なコンクリートブロックの持ち主であるオーレン伯父は、亡くなってかれこれ二十年になる)。 伯母が覚えていたのは、スズメバチの襲撃と、足の指の怪我と、そのときの私の反応だけだ。 「すごい悲鳴だったねえ、スティーヴン」と、伯母は言った。 「でも、あのときの声はとて

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  • 履歴書 1(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 1 幼いころの最初の記憶のひとつに、想像のなかで別人になったときのことがある。 私はリングリング・サーカス団の怪力男だった。 メイン州ダラムにあるエセリン伯母とオーレン伯父の家に行っていたときのことだ。 伯母はそのことをよく覚えていて、それは私が二歳半か三歳半のときのことだったといっている。 私はガレージの隅にあったコンクリートブロックを持ちあげて、平らなセメントの床をゆっくりと歩いていた。 心のなかでは、動物(たぶん豹)の皮のチョッキを着て、センター・リングを横切っているつもりだったのだろう。 観客は固唾を呑んでみている。 私の離れ業は白くまぶしいスポットライトに照らしだされている。 観客の顔には驚きの表情がある――こんな力持ちの子供は見たことがない。 「まだ二歳だってよ」と、誰かがあきれ顔でつぶやいている。 読み方書き方 伯母おばoba

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  • 履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 履歴書 メアリー・カー回想録『うそつきくらぶ』に私は打ちのめされた。 その激しさ、美しさ、方言の楽しさによって。 さらには、その記憶の完全性によって。 メアリー・カーは子供のころのことを全部思えている。 私はちがう。 私の子供のころの道のりは平坦ではなかった。 母子家庭で、私が小さいころ、母は何度も転居を繰りかえしていた。 はっきりわかっていることではないが、経済的にも行きづまり、 一時期、私と兄を姉妹のひとりの家に預けたこともあるらしい。 もしかしたら、私が二歳で、兄のデイヴィッドが四歳の時に莫大な借金をして行方をくらました父を追いかけていたのかもしれない。 だとしても、結局見つけだすことはできなかった。 私の母ネリー・ルース・ピルズベリー・キングは時代に先駆けて自立した女性のひとりだが、好き好んでそうなったわけではない。 メアリー・カ―が

    履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 自叙伝ではない。 どちらかというと、履歴書に近い。 私がここであきらかにしようとしているのは、ひとりの作家がどうやって自分をつくりあげていったかということである。 ひとりの作家がどうやってつくられたかではない。 境遇や一途さによってつくられるものではない(一時期はそう思っていたこともあるが)。 道具は元々のパッケージのなかに入っている。 だが、それはとりたてて特殊な道具ではない。 ほとんどの人間は多少なりとも作家やストーリーテラーの才能を持っている。 そういった才能は磨き、膨らませることができる。 そうでなかった、このようなを書く意味はない。 要するに、私の場合はこうだったというだけの話である。 野心、願望、運、それに、いくらかの才能が作用しあって成長していったプロセスの記録だ。 行間を読む必要はない。 そもそもそんなに意味のあるものではな

    履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 もしかしたら、私が二歳で、兄のデイヴィッドが四歳の時に莫大な借金をして行方をくらました父を追いかけていたのかもしれない。 だとしても、結局見つけだすことはできなかった。 私の母ネリー・ルース・ピルズベリー・キングは時代に先駆けて自立した女性のひとりだが、好き好んでそうなったわけではない。 メアリー・カ―が描きだす子供のころは、パンのラマのように見晴らしがいい。 私の子供ころは霧に覆われていて、記憶はそこから隔離された樹のようにときおり顔を出し、私をとっておうとしているかのように思えた。 以下はそのようない記憶の断片と、それよりは多少なりとも脈絡のある少年期から青年期にかけてのスナップショットの寄せ集めである。

    履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...
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    キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 履歴書 メアリー・カー回想録『うそつきくらぶ』に私は打ちのめされた。 その激しさ、美しさ、方言の楽しさによって。 さらには、その記憶の完全性によって。 メアリー・カーは子供のころのことを全部思えている。 私はちがう。 私の子供のころの道のりは平坦ではなかった。 母子家庭で、私が小さいころ、母は何度も転居を繰りかえしていた。 はっきりわかっていることではないが、経済的にも行きづまり、 一時期、私と兄を姉妹のひとりの家に預けたこともあるらしい。 キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2 King, Stephen Edwin "On Writing" 2012/10/11 Hodder Paperback 978-1444723250

    履歴書(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 前書き その三(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 前書き その三 前書き その三 文中には触れられていない決まりごとがひとつある。 ”編集者はつねにたがしい”ということた。 そして、そこから導きだされるのは、作家はみな編集者のすべてのアドバイスす従う必要はないという結論である。 作家はみな罪深く、編集者の完全無欠さからはほど遠い。 言葉を変えれば、執筆は人間わざ、編集は神わざということになる。 書の編集を担当してくれたのは、これまで私の小説を多く手がけてくれたチャック・ヴェリルである。 今回もまたチャックは神わざを見せてくれた。 ――スティーヴ キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2 King, Stephen "On Writing" 2012/10/11 Hodder Paperback 978-1444723250

    前書き その三(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 前書き そのニ(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 前書き そのニ 前書き そのニ 書が短いのは、世の中の文章読のほとんどが戯言を詰め込め過ぎている詰めこみすぎているからである。 小説家は総じて自分が何をしているのかを理解していない。 何がよくていいものをかけたのか、何が悪くていいものを書けなかったのか、わかっていない、 だから、そのが短ければ短いほど、戯言も少なくなるということになる。 その顕著な例がウィリアム・ストランク・ジュニアとE・B・ホワイトの共著『英語文書ルールブック』である。 同書に戯言はほとんどない、というか、まったくない。 当然、分量も少ない(全部で八十五ページで、書よりずっと短い)。 向上心のあるものなら、必ず読むべし。 “文章作りの原則と”と題された章のルール17は、“無駄な言葉は省け”だ。 私もそのように心がけよう。 キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小

    前書き そのニ(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 前書き そのニ(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    前書き そのニ(書くことについて) と題された章のルール17は、“無駄な言葉は省け”だ。 私もそのように心がけよう。 キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2 Strunk Jr, William = White, E. B. "The Elements of Style, Fourth Edition" 1999/7/23 Longman Publishers 978-0205309023

    前書き そのニ(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 前書き その一(書くことについて) - A Librarian is logging for...

    キング・スティヴン『書くことについて』 前書き その一 前書き その一 九〇年代のはじめ(たしか一九九二年だったと思うが、楽しいときのことは案外覚えていないものだ)、私はほぼ全員が作家からなるロックバンドに参加した。 バンド名はロック・ボトム・リメインダーズといって、サンフランシスコの出版社の広報担当者であり音楽者のキャシー・カーメン・ゴールドマークの提言から生まれた。 メンバーはリードギターのデイブ・バリー、ベースのリドリー・ピアスン、キーボードのバーバラ・キングソルヴァー、マンドリンのロバート・フルガム。 そしてリズムギターの私。 たいていはそこにキャシー、タッド・バーチィムス、エイミ・タンというヂィキシー・カップスもどきの女性トリオが加わっている。 元々は一回こっきりの企画で、ABCのブックフェアの余興にツー・ステージ演奏し、無駄に過ごした青春を数時間にわたって取り戻し、物笑いの種に

    前書き その一(書くことについて) - A Librarian is logging for...
  • 書くことについて - A Librarian is logging for...

    前書き その一 だが、わかりやすい答えがかならずしも正しい答えとはかぎらない。 カーネル・サンダースはおびただしい数のフライドチキンを売ったが、その作り方を知りたがっている者がどれだけいるか。 いやしくも書くことについて何かを語ろうとするなら、世俗的な成功以上の理由がなくてはならない。 別の言い方をすれば、くだらない自慢話や絵空事としか思えないようなものは(たとえ書のような短いものではあっても)書きたくないということである。 その種の(あるいは作家)は、腐るほど市場にあふれている。 たしかにエイミが言ったとおり、言葉については誰も何も尋ねようとしない。 ドン・デリーロやジョン・アップダイクやウィリアム・スタイロンのような純文学の作家には尋ねても、通俗小説の作家には尋ねようとしない。 だがわれわれ三文文士の多くもまた、及ばずながら言葉に意を注ぎ、物語を紙の上に紡ぎだす技と術に心を砕いてい

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    キング・スティヴン『書くことについて』 (書くことについて) 正直は最善の策 ――ミゲル・デ・セルバンテス 噓つきはばかる ――無名氏 キング・スティヴン『書くことについて』2013 小学館文庫 978-4-09-408764-2 King, Stephen "On Writing: A Memoir of the Craft: Twentieth Anniversary Edition with Contributions from Joe Hill and Owen"2012 Hodder Paperback 978-1444723250

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    前書き その一 ある日、マイアミ・ビーチでの演奏のまえに中華料理べているとき、私はエイミに訊いた――講演会の質疑応答の際に、一度もう尋ねられたことがない質問はないか。 大勢の熱心なファンの前で、普通の人間のように片脚ずつズボンをはくようなことはしないふりを装っているとき、答えに窮する質問を浴びせられたことはないか。 エイミはひとしきり考えてから答えた。 「言葉について訊かれたことは一度もないわね」 私はこの一言に測り知れないほど多くを負っている。 じつを言うと、書くことについてのを書きたいと前々から思っていたのだが、その動機に確信が持てず、ずっと二の足を踏んでいた。 なぜ書くことついて書きたいのか。 なぜ書くに値するものがあると思っているのか。 いちばんわかりやすい答えは、私のような売れっ子の作家なら、書くことについて多少は語るに値するものを持っているだろうということだ。 キング・ス

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