キング・スティヴン『書くことについて』 履歴書 3 ヴェスト・ディピアにいたのはほんの一時期だったし、あまりいいこともなかった。 アパートメントの三階から追いだされたのは、六歳の兄が屋上をうろついているのを隣人が見つけて、警察に通報したからだった。 そのとき、母がどこにいたかは知らない。 その週のベビーシッターがどこにいたかも知らない。 とにかく、私は素足でバスルームのヒーターの上に乗っかって、なりゆきをみまもっていた。 兄が無事にバスルームまで戻ってこられるかはわからなかった。 もしかしたら、屋根から転げ落ちるかもしれないと思っていた。 結局、兄は無事に戻ってきた。 いまは五十五歳で、ニューハンプシャーに住んでいる。 参照 キング・スティヴン『書くことについて』2013年 小学館文庫 978-4-09-408764-2 King, Stephen "On Writing" 2012/10