54年間連れ添った夫が逝ってやがて5年になる。 定年後は静かな所に住みたいという彼の希望で海辺の町に移った。坂を少し登ったところで縁側からは海が180度広がりその向こうに富士山が四季折々、日々刻々に異なる姿を見せてくれる。 築80年の日本家屋は物珍しくて少し手を入れただけでそのまま住んだが個室にしきられない広い空間は解放感があって二人暮らしには快適だった。 朝は浜辺へ、夕方は裏山を鶯や時鳥の鳴き声を間じかに聞きながら二人で散歩した。 自然に恵まれた地は虫や動物も多いということ。 ゴキブリは勿論、ヤモリや大きな蜘蛛が姿を見せ、庭にはシマヘビや時にはマムシが出て来て蛇嫌いの私は大声で夫を呼ぶ。彼は都会育ちなのに駆けつけてやっつけてくれた。 マムシは生け捕りにしてガラス瓶に入れて観察した後、土地の方にさしあげるとマムシ酒にするからと喜ばれた。 野良猫がよく遊びに来るようになり、タヌキも日向ボッコ