「星が痛い」 四肢を失った少女、灰原由宇(はいばらゆう)は、対局中につぶやく。 卒業旅行で海外に行った彼女は、拉致され、四肢を切断される。 そして競売にかけられ、賭碁師の大金持ちに買われてしまうのだ。 賭碁によって自由をとりもどすため、由宇は碁を秘かに憶え、その勝負に勝つ。 そして、プロ棋士の相田九段と巡り逢い、棋界のトップへとのしあがっていく。 宮内悠介「盤上の夜」は、盤と石こそが自分の四肢であるような少女を描いて、壮烈な碁の勝負世界を描く短編。 そして一冊の本として上梓された『盤上の夜』は、囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋といった卓上遊戯の対局をめぐる短編集だ。 こ、これが、すごいんですよ。 語り手はジャーナリスト。 表紙に「第1回創元SF短編賞山田正紀賞受賞作品」となければ、卓上遊戯をめぐるルポルタージュが六編収録されていると勘違いする人もいるのではないか。 たとえば「人間の