『怨讐星域』! この表題にたじろぐが、内容はバイオレンスやハードボイルドではなく、あくまで世代宇宙船と惑星植民の物語だ。「怨讐」はしっかりと描かれているが、それは個々人の直線的な感情ではなく、まとまった社会・文化の底流としてである。 たたずまいは伝統的なSFだ。ファンにとっては懐かしい設定やアイデアをいくつも組みあわせながら、梶尾真治一流の温かみとコクのある作品に仕上がっている。物語全体のスケールが大きく文庫版三分冊のボリュウムながら、挿話ごとに独立した山場があり、それぞれに登場人物の心情に沿った感動が味わえる。 太陽フレア膨脹による地球壊滅が予測され、世代宇宙船による脱出が極秘裏に計画された。この宇宙の方舟「ノアズ・アーク」に乗ることができるのは選ばれた三万人だけだ。ちょっと年季の入ったSF読者なら、この発端にJ・T・マッキントッシュの『300:1』を連想するだろう。しかし、マッキントッ
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