ゴードン・マッタ=クラーク展を見ながら考えたのは、かつて東京でも起きていたであろう20世紀の都市の変化に、ニューヨークで対峙していた彼の実践と感覚を、どうやったら現代のこの場所に取り戻せるかであった。アートから見えてくる現在の都市と公共を一巡しつつ、マッタ=クラークの普遍性を考えてみたい。 地域アート、コミュニティアートとしての《フード》 展覧会場のキャプションの多くにめずらしく各作品の住所が書かれている。それらを地図にプロットしてみると、郊外の作品以外はだいたい4km四方のコンパクトな範囲に収まっていた★1。作品の制作が地域に根ざしていたと捉えていいだろう。マッタ=クラークがアーティストたちと運営していたレストランの《フード》はその中心に位置し、地域アートやコミュニティアートとして見るほうがしっくりくる。展示されている《フード》のドキュメント映像を注意深く見ていくと、コミュニティのなかで
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