展示されているのはわずかに3点。フランスの画家ギュスターヴ・クールベによる一枚の風景画《狩猟者のいる風景》と、ドイツの現代画家ゲルハルト・リヒターの風景画《シルス・マリア》(882-1)、及び彼の代表シリーズである「抽象絵画」から《抽象絵画(ラヴィーン)》だ。常設展示の片隅にひっそりとあつらえられた小さな空間で、美術館には場違いなほど親密な空気感をたたえて並べてある。 リヒターとクールベという組み合わせは、意味深長なようでも、単にミスマッチなようでもある。半世紀以上にわたって絵画の(不)可能性に直面し続けてきたリヒターの前に任意の大画家を置けば、誰であれ意味ありげな緊張関係が生じるだろう。しかし、この展覧会の発想は単純だ。リヒターの自宅のダイニング・ルームにはクールベの風景画が、その隣の部屋には《シルス・マリア》がかけられているという。つまり本展は、国立西洋美術館収蔵のクールベを用いて、リ