放射性物質(放射能)の拡散が懸念されるなか、被曝(ひばく)を弱める効果のある「安定ヨウ素剤」の需要が急激に高まっている。主成分の「ヨウ素(ヨード)」は、日本が推定埋蔵量世界1位、産出量2位を誇る希少元素だ。増産は容易にみえるが、計画停電による工場稼働率の低下が供給の壁となっている。(時吉達也) ◇ ■千葉にたっぷり 安定ヨウ素剤の原料、医薬用ヨウ化カリウムの国内唯一の製造会社「日本天然ガス千葉工場」(千葉県白子町)は震災後、休日を返上して生産ラインをフル稼働。製薬会社の増産要請を受け、2カ月間で通常の1年間分の生産を目指している。担当者は「事態が悪化すれば、需要はさらに増える。一日も早く準備を整えたい」と意気込む。 放射性物質の中でも、甲状腺がん発症の可能性を高めるとされる放射性ヨウ素。安定ヨウ素剤は、その蓄積を防ぐ薬として注目を集める。原料の主成分であるヨードは化学合成で作ること